<高校野球・秋季東北大会:聖光学院4-3仙台育英>◇10日◇2回戦◇名取スポーツパーク愛島球場

 聖光学院(福島)が激戦を制し、みちのく勢初の5季連続甲子園へ難関を突破した。延長12回の末、仙台育英(宮城)に4-3で逆転勝ち。右腕エース横山貴明(2年)が粘りの投球で180球を投げ抜いた。仙台育英のエース穂積優輝(2年)も負けじと161球完投も、2季連続の甲子園出場の夢は、事実上打ち砕かれた。

 土壇場のピンチでも、横山は動じなかった。1点リードの12回2死一、二塁。打ち取ったゴロを斉藤晃平二塁手(2年)がファンブルし、2死満塁。それでも、横山は笑顔だった。「(斉藤は)守備が下手なので、エラーすると思った」。次の打者に投じた180球目は、外角に制球された直球。今度こそ二ゴロに仕留め、歓喜の瞬間を迎えた。

 内野の失策と自身の悪送球も絡み、5回までに3点を先制された。それでも、横山は自らのバットで流れを引き寄せる。7回に左翼線適時二塁打で1点を返すと、後続も続き同点に追いついた。そして、穂積との1歩も譲らない投手戦が続く。「絶対に先にマウンドを降りたくなかった」と気迫を前面に押し出すと、仲間が応えた。延長12回2死三塁、田村勝歩遊撃手(2年)が左前適時打を放ち、ついに勝ち越した。

 大相撲のテレビ観戦が趣味の横山は、琴光喜のファン。時にはしこを踏み、体幹を鍛える。抽選で初戦が仙台育英と決まっても、横山は「相手は関係ない。いつもどおりの投球をするだけ」と落ち着いていた。冷静さと強靱(きょうじん)な下半身で、強豪との激戦で踏ん張り抜いた。

 06年秋の東北大会決勝以来の対戦だった。この時はサヨナラ負けだった。斎藤智也監督(45)は「(横山は)一緒に心中してもいいぐらいの出来だった。うちにとっては、大きな壁を越えたね」。エースをたたえるとともに、みちのく勢初の5季連続、3年連続3度目のセンバツへ自信を深めていた。【由本裕貴】