<高校野球鹿児島大会:徳之島2-0有明>◇3日◇1回戦◇鴨池市民

 徳之島が気合の3年連続初戦突破だ。エース藤井大智(3年)が1安打完封。守り勝つ野球で有明を退けた。フェリーで16時間かけて鹿児島市内にやってきたナインは体調不良の選手が出る中、全員野球で勝利をつかんだ。

 気合を入れて全員で刈り込んだ青い頭が喜びいっぱいに揺れていた。エース藤井が1安打完封。最後の夏に今年初の県大会勝利をあげた。「厳しい試合になることは予想していました。藤井がよく投げてくれました」と田村正和監督(35)はエースをねぎらった。

 藤井は6回まで失策で走者を出しただけ。7回の先頭打者に左前へ運ばれたが、連打を許すことなく後続を断ち切った。三振は3。バックを信頼して打たせて取り、わずか85球の完封劇だ。人生初の大記録は逃したが「ノーヒットは意識してなかった。失策が出ても切り替えて、また守ってくれると信じて投げました。チームとして勝てました」と仲間に感謝した。

 開会式の前夜、フェリーで16時間かけて到着し、そのまま会場へ直行。強行日程がたたり、友野晃明主将(3年)と大倉渉副主将(3年)が熱中症で倒れた。点滴を受け、医師からも休養を取るよう言われていたが強行出場し2人の打点で勝利を決めた。「主将と副主将が欠場したらヤバかったけど、2人で打って良かった」と友野主将は元気に笑顔を見せた。

 徳之島には高校野球のチームが2校しかないため、練習試合も満足にできない。連休や夏休みには遠征に行くが、費用がかさむため冬場は畑を借りて野球部でジャガイモを作り、遠征費の足しにするなど離島ならではの苦労も多い。「みんな仲がいいんです。練習が終わってみんなで海に遊びに行ったりするんですよ」と友野主将。固い絆で結ばれたナインが、8強入りした07年以来の旋風を巻き起こす。【前田泰子】