<高校野球長崎大会:海星11-0佐世保西>◇15日◇2回戦

 社会人野球の名門、三菱重工長崎に選手、監督として携わった牧瀬寅男氏(48)の次男で、シード海星エースの凌都(3年)が佐世保西撃破に貢献した。現役時代投手だった父の助言を生かしたキレのある直球と変化球を巧みに操り5回無失点。6回は2番手投手に委ねたが、丁寧な投球で6回コールド勝利につなげた。優勝して昨夏準Vに終わった悔しさも晴らす決意だ。

 海星のエース牧瀬が、サラブレッドぶりをいかんなく発揮した。この日、自己ベストを記録した140キロのキレのある直球をコーナーに投げ分け、佐世保西打線に的を絞らせない。カーブやスライダーを使った緩急の揺さぶりも効果的だった。7安打を許すも連打は1度だけ。奪三振は3と少ないが、要所をしめて5回無失点で2番手にバトンタッチした。先発の役目を果たしての6回コールド発進に「まっすぐが走っていたので押しました。変化球もうまく使えました」と笑みを見せた。

 好投の裏には、父寅男氏の存在があった。九州の社会人野球の強豪、三菱重工長崎で現役時代に投手として都市対抗準V(91年)や、監督として日本選手権8強入り(04年)都市対抗3度出場などを経験。現在野球部にかかわっていないが、一緒に暮らす父から聞かされる当時の体験談や投球術のアドバイスは肥やしになっている。中学のころから、三菱重工長崎の試合のDVDも暇さえあれば見ていたという。いつも気にかけてくれる父のためにも勝利を報告したかった。寅男氏は「先発の役割をきっちり果たし、最後の夏を一生懸命頑張ってほしい」とエールを送った。

 悔しさもバネにした。昨夏決勝戦では長崎日大に1-4で敗戦。ベンチでそのつらさを胸に焼き付けた。それ以来、練習の鬼と化した。300メートルのタイヤ引き1日10本や、3000、1500メートルのタイム走を繰り返して徹底的に下半身を強化。そして努力のおかげで急成長。今春にエースナンバーを勝ち取った。加藤慶二監督(37)は「ボールは悪くないが、ピンチでの投球をもう少し教えたい」という。父や指導者の教えも勝つために必ず結実させる。【菊川光一】