<高校野球青森大会:浪岡5-4尾上総合>◇19日◇3回戦

 地域とのつながりが強く、ナインの一体感も抜群の浪岡が尾上総合に逆転勝ち、ベスト16にコマを進めた。身長156センチの工藤雄太捕手(2年)が先制の犠飛と逆転の2点適時打を放ち、4打数2安打3打点と活躍した。

 浪岡応援席から大歓声がとどろいた。7回表1点を返しなお2死二、三塁から3番工藤雄が中前打。2者が生還、ついに5-4と逆転した。工藤雄は再三、エースの斎藤峻(3年)に声を掛け、タイムを取るなど捕手としても好リード。1点差を守りきった。勝利の瞬間、ほこりと汗まみれの顔から白い歯がこぼれた。

 「負けていたので思い切り行った。監督さんからセンターを意識しろと言われ、その通り打てた」。工藤雄は声を弾ませた。156センチと小柄だが、浪岡鋭治監督(49)は「体が強いし力もある。何よりファイトマン。投手の斎藤がおとなしいので、工藤がよく引っ張ってくれる」とほめた。

 1965年(昭40)創部でこの日の白星が夏通算30勝目。そのうち12勝をここ5年で挙げた。現在は合併して青森市だが、もともとリンゴ農家などが多い旧浪岡町にある。躍進の理由を浪岡監督は「環境に恵まれている」と言う。少年野球が盛んで指導者や保護者が熱心。ナイター設備を持つ小学校が4校もある。ほとんどが浪岡中出身者で一体感が強い。

 ナインは冬、ボランティアで独居老人の家の雪かきを行うのが伝統。お盆の時期は地元の夏祭り「北畠まつり」にユニホーム姿で参加し、みこしを担ぐ。地域と一体化し、地元の人たちも浪岡野球部を応援する。07年に奈良岡昭彦前監督のもとで24年ぶりにベスト8。翌年浪岡監督に代わってもこの伝統は変わらない。ナインは仲が良く、伸び伸び大らか。「細かいミスで苦しい試合になったが欲を言えばきりがない。うちの持ち味の積極野球をしてくれた」と浪岡監督。次は優勝候補本命の光星学院と対決する。工藤雄は言った。「今大会の目標だった。実現してうれしい。気持ちで負けず思い切りぶつかる」。【北村宏平】