<高校野球秋田大会:秋田中央6-5秋田商>◇22日◇準決勝

 秋田中央が終盤に逆転、秋田商を下し06年以来5年ぶりの決勝進出を決めた。1-5で迎えた7回裏に4連打含む5安打を集中し同点とすると、8回裏2死一、三塁から3番斎藤崇徳中堅手(2年)が左中間二塁打を放ち勝ち越した。

 ノーシードの秋田中央が、またもやミラクルを起こした。8回、一打勝ち越しの場面。準々決勝本荘戦で延長12回にサヨナラ二塁打を放った斎藤が打席に立った。「直球を狙っていた」という3球目、顔の高さに来た棒球を振り切ると打球は左中間浅めにポトリと落ちた。185センチの長身ならではの“ミラクル打法”を桑原康成監督(35)は「(悪球打ちは)あの子のいいところでもあるし悪いところ。不思議ですね」と苦笑いしながらたたえた。

 会場の秋田県立野球場は斎藤が野球を始めるきっかけとなった場所だ。通称こまちスタジアムで、小3年時に生まれて初めて生でプロ野球を見た。当時中日の福留(現カブス)が豪快なアーチをかけ「バスケットをやろうとしていた」という斎藤は、一気に野球の魅力に取りつかれた。福留をまね左打ちで始めたが「なじまなくて(笑い)」とすぐ右に変えたという。思い出の地で2日前のサヨナラ打に続き、この日は3安打を放ってみせた。

 劇的勝利には、斎藤をはじめ選手たちの経験が生きた。今年のチームは多くの練習試合でリードを許したという。そこからいかにひっくり返すか-。試合中にテーマを持ち、粘り強さと劣勢での重圧をはね返す力を身に付けた。今大会は5戦中3戦が逆転勝ち。140球で完投したエース右腕、佐藤拓(3年)も「日ごろからあきらめない姿勢でやってきた」と胸を張る。

 秋田市立から82年に現校名となってから、まだ甲子園出場がない。37年ぶりの聖地へ向け斎藤は「勝つためにやってきたんだから」と意気込む。今夏まで公式戦は昨秋地区予選で1勝だけのチームが、勢いそのままに決勝でもミラクルを起こすつもりだ。【清水智彦】