<高校野球南北海道大会:北海5-4駒大苫小牧>◇24日◇決勝

 泣くな駒苫、胸を張れ-。駒大苫小牧は土壇場で北海を追い詰めたが、あと1歩で4年ぶりの甲子園を逃した。2-4の9回裏、代打志津公章左翼手(3年)の左前2点適時打で追いついたが、直後の延長10回に勝ち越し点を許して力尽きた。3年生部員が5人で、スタメン8人が1、2年生の若いチーム。南北海道決勝で初黒星も、夏甲子園を沸かせた黄金期をほうふつさせる粘りで、完全復活の秋を予感させた。

 甲子園の夢が散った瞬間、駒苫戦士はその場でうずくまった。全員があふれるような涙を流し、目を真っ赤に腫らした。スタンドに向かって整列後、ベンチに戻ってうなだれ、しばらくは動けず、声にもならなかった。佐々木孝介監督(24)は「攻め切れなかった。(選手に)教え切れていない、僕の責任です」と話すと、遠くを見つめた。

 伝統は生きていた。「逆転の駒苫」らしさは、見せた。2点を追う9回裏、1死から連打とボークで二、三塁。一打同点の絶好機に、この夏初打席の代打志津が左前にはじき返した。3年生の意地の一振りで追いついた。「甲子園に出られなかった、過去の先輩たちの借りを返そうと思った」と志津。山口主将は「最後は信じられない力が出た。やってきたことは、間違いじゃなかった」と涙ながらに振り返った。

 05年夏の全国優勝メンバーの兄がいる2年生の青地は「あの場面は3年生が引っ張ってくれた。駒苫の意地を見せてくれた」と言った。先発は4番の山口だけという1、2年生主体のチーム。試合中は最終回にマウンドに上がった近藤、代走出場の日下部がベンチで献身的に下級生をサポートした。先頭に立って、声を出した。そんな思いは、修羅場の粘りにつながった。

 04年夏の全国初制覇を主将として経験している佐々木監督は「うちの野球は、みんなで結び付きを強くしてやっていく野球。今後はそこを見ていきたい」と秋を見据えた。青地は「この借りは、必ず返したい」。2万500人の観衆を沸かせた3年生の底力は、後輩に引き継がれた。【石井克】