<全国高校野球選手権:開星5-0柳井学園>◇10日◇1回戦

 開星(島根)はエース白根尚貴投手(3年)が3安打完封で柳井学園(山口)に快勝。

 開星が誇るジャイアント右腕、白根はゆっくりとガッツポーズをした。柳井学園を相手に8三振を奪う3安打完封。昨春、夏に続く3度目の甲子園で初勝利を飾った。甲子園で完封した投手の中では最重量級の体重98キロ。巨漢投手は試合後のお立ち台で「3安打完封は出来過ぎです」と静かに振り返った。

 試合終了時のガッツポーズには苦い思い出がある。昨夏1回戦(対仙台育英)、1点リードの9回2死満塁で中飛に打ち取り、思わず両手を挙げて喜んでしまった。だが中堅手がまさかの落球で逆転負け。最後まで油断は禁物であると身を持って知った。この日は初回に自己最速タイ149キロをマークするも、中盤からは変化球を増やす工夫をして三塁すら踏ませなかった。精神的な成長の証しだった。

 体も成長した。昨夏の91キロから7キロ増。白根は「筋トレには力を入れている」と大きな胸をさらに大きく張る。島根大会で3本塁打を放った打撃とともに、投球にも効果が出た。マウンドで威圧感のある大きな体こそが何よりの武器だ。

 白根の快投で、野々村直通監督(59)の甲子園復帰戦を勝利に導いた。10年センバツでの問題発言で引責辞任し、今年4月に復帰した。「まさか甲子園に戻って来られるとは。白根がね、粘ったよ。子供たちが勝ってくれて…」。本年度で定年退職するため、これが最後の甲子園となる。白根らナインは、まだまだ監督に勝利をプレゼントするつもりだ。次はセンバツ4強の日大三。白根は「気持ちだけは負けない。チャレンジャー意識を強く持っていきたい」と表情を引き締めていた。【佐藤貴洋】