<全国高校野球選手権:新湊4-1龍谷大平安>◇10日◇2回戦

 新湊(富山)のエース袴谷圭汰(3年)は、龍谷大平安(京都)の最後の打者を空振り三振に打ち取ると両手を天に突き上げた。12年ぶりの勝利で初の3回戦進出を決めた。

 ピンチの連続だった。9回には無死二、三塁で左飛を打たれたが、三塁走者のタッチアップが早いと判定されアピールアウトになった。「最後が1番苦しかった。みんなの力でピンチを抑えることができました」。仲間へ感謝した。

 31年前、亡き父が立ったグラウンドで勝利を刻んだ。新湊OBの父昭成さん(享年45)は80年に森義人監督(49)とともに甲子園に出場した。小さいころはキャッチボールをしてくれた父が、くも膜下出血でこの世を去ったのは中2のとき。家で突然倒れ、帰らぬ人となった。母校のエースとして甲子園のマウンドに立つ息子を誰より見たかったのは父だった。

 「父もどこかで投げるのを見てくれていると思うので、次も勝ちたい」。アルプス席には父の写真を抱える母宏美さん(49)がいた。「夢のようですね。天国の父も見守ってくれていると思います」。宏美さんは涙を流して息子の勇姿を見つめた。

 地元では86年春、初のセンバツで4強入りした「新湊旋風」の再来を期待している。「1つ1つ勝った結果、旋風と呼ばれるようになったらうれしい」。父の、そしてみんなの夢を背負って袴谷は初の8強を目指す。【前田泰子】