<全国高校野球選手権:如水館3-2能代商>◇16日◇3回戦

 甲子園史上初の劇的3連勝だ!

 広島代表の如水館が能代商(秋田)との延長12回に及んだ熱戦を逆転サヨナラで制し、春夏通じて初の8強に進出。同一チームでの3試合連続延長戦は大会史上初だった。12回、同点とし木村昂平捕手(2年)が左前にサヨナラ打。エース浜田大貴投手(3年)も3回からロング救援で勝利を呼んだ。今日17日、関西(岡山)との準々決勝に臨む。

 ほほ笑む女神に導かれた。延長12回。如水館が同点に追いつきなおも2死一、三塁。1ボールからの2球目、能代商・保坂の内角まっすぐを、2年生捕手の木村が左前にはじき返しガッツポーズ。今大会自身2度目のサヨナラ打に「絶対に決めてやろうと。先輩と長く野球をやりたい」と興奮した。同一チームが3試合連続で延長戦を戦うのは大会史上初。チーム一丸で3度目も勝利した。

 1点勝ち越された12回だ。崖っぷちの中、先頭門田が四球で出塁。1死後、金尾の左前打で一、二塁と好機を広げ、1年生4番の島崎だ。ここで意表を突き、二塁走者の門田が三盗に成功。迫田穆成監督(72)から常に「120%セーフになるなら走っていい」と信頼される韋駄天(いだてん)は盗塁だけでは終わらない。島崎の一ゴロ処理のスキを突き、すかさず同点のホームにも滑り込んだ。「一塁手がベースタッチの際に背中を向けると分かっていた」。時間差の好走塁から劇的勝利が生まれた。

 エースの力投が初の8強進撃を支えている。2番手登板で10回7安打1失点の浜田は「先発で投げたいんですけどね」と笑う。先発直訴も却下され、登板は3回から。173センチ、76キロの左腕はこの日も最速は137キロだったが、父晃さん(47)が「バスケットボールをつかめる私の手より、1関節分は大きい」と笑う“ビッグハンド”が武器。迫田監督は「球速はないが球に回転数を加えられる」と明かす。

 2年前の夏は高知との初戦で「同一カード2試合連続ノーゲーム」を記録したが負けた。今回は違う。大会最年長の指揮官は、延長戦続きにも「いやぁ、点滴でも打たないとね」と涼しい顔だ。浜田は「如水館は何かが起きる」と、1年生で体感した甲子園で笑顔を絶やさない。「少しでも長く甲子園で野球ができるから喜んでプレーできた」と木村。どこのチームよりも長くアツい夏はまだ終わらない。【佐藤貴洋】

 ◆浜田大貴(はまだ・ひろき)1993年(平5)5月7日、愛媛・宇和島市生まれ。小3から「石応(こくぼ)ジュニア」でソフトボールを始め、城南中を経て如水館に入学。好きな選手は西武の岸孝之。家族は両親と姉2人、祖父母。173センチ、76キロ。左投げ左打ち。