<高校野球福岡大会:東福岡20-0香住丘>◇12日◇2回戦◇久留米

 ドラフト1位候補にあがる福岡のビッグ左腕が無失点で夏のスタートを切った。東福岡の森雄大投手(3年)が初戦の香住丘戦に先発し、3回を2安打無失点。チームは5回コールド発進した。直球は最速146キロを記録し、5三振を奪った。12球団34人のスカウトが集まり、センバツV腕の大阪桐蔭・藤浪ら「ビッグスリー」にも負けない逸材に熱視線を送った。

 スコアボードのスピードガン表示は初球から141キロを示した。ネット裏に12球団34人のスカウトがズラリ居並ぶ中、東福岡の左腕森が先発し3回を2安打無失点。ラストサマーが全力投球で幕開けした。

 いきなり初回、先頭打者に142キロの直球で死球を与えたものの、その後は140キロ台の直球で三振を奪い力でねじ伏せた。2回1死満塁の場面も冷静に後続を打ち取り無失点。直球の最速は自己最速に2キロと迫る146キロ。3回は変化球中心の投球で3者凡退に仕留めて、4回からは右腕の野原総太投手(3年)につないだ。

 「緊張しました。期待に応える投球ができなかった。満足かと言われれば全然でした」

 森は厳しく自己採点した。初戦の先発は背番号1の野原ではなく、森。エースだった秋、春の県大会は初戦敗退。初戦で勝った経験がない森に「どれぐらいトラウマを振り払っていくかでした。勝てたことが良かった」と葛谷修監督(54)はあえて先発させ、その成長に期待。森も「春とは違った形で迎えられました。気持ちも充実していました」と話し、春の県大会初戦敗退後に自信喪失したという苦い記憶を振り払った。

 完成度の高い左腕として、センバツで「ビッグスリー」と呼ばれた大阪桐蔭・藤浪、花巻東・大谷、愛工大名電・浜田の高校トップ級の投手と並ぶ逸材と評価を受ける。阪神田中スカウトは「左であれだけ投げられる投手はいない。センバツで投げた投手たちに負けないくらいのものを持っています」と太鼓判を押した。

 森は言葉に力を込めた。「裏方で頑張ってくれる3年生もいるので、みんなで勝ちたい」。07年以来の甲子園へ、20-0の大勝で東福岡の夏が始まった。【前田泰子】

 ◆森雄大(もり・ゆうだい)1994年(平6)8月19日、福岡市生まれ。小4で野球を始め、内浜中では野球部に所属。ホークスカップで優勝。福岡県選抜で全国4強。東福岡では1年からベンチ入り。好きな選手は西武菊池。184センチ、76キロ。左投げ左打ち。