<高校野球山梨大会:東海大甲府8-4甲府工>◇22日◇決勝◇小瀬球場

 東海大甲府が山梨38校の頂点に立った。1回、押し出し四球で先制すると、斎藤浩樹外野手(3年)が2点適時打。3、4、5回にも適時打を浴びせ、前半に大量8点を奪って勝負を決めた。5試合すべて2ケタ安打を記録し、総得点は45。また全試合で1回に得点を挙げるなど、打撃力で8年ぶり11度目の夏の甲子園切符をつかんだ。

 最後の打者を中飛に打ち取ると神原友投手、石井信次郎捕手(ともに3年)のバッテリーが抱き合って喜ぶ。マウンド付近にはすぐに歓喜の輪が広がった。8年ぶりの甲子園出場。ナインの手で3度宙に舞った村中秀人監督(53)は「本当によく成長してくれた。選手たちの集中力。これがすべてです」。珍しく称賛の言葉を贈った。

 まさに打って、打って、打ちまくってつかんだ甲子園切符だ。5試合連続の2ケタ安打。総得点は45。1試合平均9得点の強力打線だ。何より特筆すべきは5試合すべてで1回に点を挙げたこと。大会を通じて1度も相手に主導権を渡すことがなかった。この日も3四死球と相手失策、適時打1本で3点を奪った。また1番から9番まで、どこからでも点が取れるのが特徴だ。この日奪った8点のうち、6番から9番打者で奪った得点が5。昨年の高橋周平(中日)頼りの打線から、鮮やかに全員野球へ変身を遂げた。

 転機は5月の関東大会だった。神原が宇都宮工(栃木)相手に1安打完封劇を演じた。2回戦で優勝した健大高崎(群馬)に敗れたものの2-4と善戦。本多将吾(3年)との2投手で、守りのめどが立った。「夏は打たないと勝てない」。そこから2カ月間、徹底して打撃強化に取り組んだ。「オレの持論なんだが、インサイドアウトの軌道を徹底させた」と村中監督。フリー打撃でも打球はセンターから逆方向ばかり。この日飛び出した4本の適時打のうち3本が逆方向への打球だった。

 打順の入れ替えも成功した。春の2番から9番に変わった新海亮人主将(3年)は言う。「長打を打てる打者がいない分、全員がつなぎの意識です。僕も上位につなげることだけ考えていました」。最後に村中監督が胸を張った。「これぞ高校野球です」。甲子園でも東海大甲府の野球を見せつける。【中村誠慈】

 ◆東海大甲府

 1946年(昭21)創立の私立校。野球部は58年に創部。生徒数は702人(うち女子215人)。甲子園出場は春4度、夏は10度。主なOBはヤクルト村中恭兵、中日高橋周平ら。所在地は甲府市金竹町1の1。渋谷勇磁校長。◆Vへの足跡◆2回戦16-0韮崎3回戦7-1日本航空準々決勝9-2吉田準決勝5-3甲府商決勝8-4甲府工