<高校野球岩手大会:盛岡大付8-3水沢>◇22日◇準々決勝◇岩手県営野球場

 引き分け再試合は、盛岡大付が水沢に逆転勝ちして準決勝に進出した。前日、15回を203球で完投した松本裕樹(2年)が右翼手で出場し、3-3の7回に決勝2ラン。8回途中からは2番手で登板し、無失点救援で勝利をたぐり寄せた。

 勝負を決めたのは前日に延長15回を投げ抜いた松本のバットだった。大雨の中の再試合。3-3の7回裏1死三塁だった。左打席で2球目の直球を振り抜くと、ボールは右翼場外へ消えた。「打った瞬間行ったな、と思いました」。会心の通算15号2ランで流れを引き寄せた。前日は投球に集中したせいか、4番打者として5打数無安打。「バッターとしても貢献できたら」と話していた通り、まずは「3番右翼」として責任を果たした。

 そして直後の8回表。先発の及川豪(3年)が2死満塁のピンチを背負ったところで投手としての出番が回ってきた。203球の疲れをジムの酸素カプセルで癒やしたが、肩は張っていた。それでも「何かあったら行くと(監督に)言われていたので」。しっかり右腕を振って右邪飛で切り抜けた。9回も1死一、二塁と走者を背負ったが、後続を断った。先輩の及川は「スゲーな、と思った。やっぱりかなわない」と笑いながらヒーローをたたえた。

 21日は初回に望月直也内野手(3年)の2ランで先制も、2回から15回までゼロ行進。関口清治監督(36)から「負け試合。奇跡でもう1試合やれるんだ」と気合を入れられ、打線に火がついた。0-3の3回に去石晴希内野手(3年)がソロアーチ。さらに6回1死満塁で福岡吉平内野手(3年)がタイムリーを放ち同点とした。4打数4安打の福岡は「昨日はセンバツ以降、一番ダメな試合だった。悔しかった」。7、8回と畳みかけるような猛攻で水沢を引き離した。

 松本は「これ以上の苦しい試合は無いと思う」。去石も「何があっても、9回終わった時に勝っていればいい」。延長15回と雨の逆転劇を戦い抜いた盛岡大付ナインの表情には自信がみなぎっていた。【高場泉穂】

 ◆松本裕樹(まつもと・ゆうき)1996年(平8)4月14日、横浜市生まれ。南瀬谷小1年で軟式チーム「南瀬谷ライオンズ」で野球を始める。南瀬谷中では「瀬谷ボーイズ」に所属。盛岡大付では1年春からベンチ入り。昨夏の甲子園でもメンバー入りした。今春のセンバツでは安田学園戦に先発。最速147キロ。183センチ、78キロ。右投げ左打ち。家族は両親、兄、弟。血液型A。