<全国高校野球選手権:木更津総合3-1西脇工>◇16日◇2回戦

 西脇工(兵庫)翁田(おうた)勝基投手(3年)の夏が終わった。木更津総合(千葉)に惜敗。初陣校を甲子園1勝に導いたエースが、マンモスを去った。

 “底力の西脇工”を最後に見せた。2点差で迎えた9回裏、2死一塁から暴投と連続四球で満塁の好機をつくった。県大会で3度サヨナラ勝利を収めていただけに、アルプスはこの日一番の盛り上がり。しかし8番稗田は一ゴロ。あと1歩届かなかった。

 エース翁田は逆転を待った。県大会準々決勝でサヨナラ勝利を飾った時も「接戦を得意とするチーム。点を取ってくれると思っていた」。この日も仲間を信じて待ったが、かなわなかった。

 ナインが涙する中「自分のピッチングができた。悔いはない」と胸を張った。ここまでほぼひとりで投げ抜いてきた。県大会3回戦では延長14回を完投。準々決勝では初回、右腕に打球を受けても投げ続けた。

 「あいつは不死身」と保育園から一緒だったチームメートは話す。小学5年のときの登山で登頂後、寄りかかっていた木が折れ、数メートル下の崖に胸から落ちてケガ。しかし笑って見せ、周囲を驚かせた。普段も冗談を言ったり、先生や仲間のモノマネで周りを笑顔にしている。決して弱さを見せることはなかった。

 1年間バッテリーを組んだ女房役の西沢にも泣き言は言わなかった。西沢は「もっと頼って欲しいんですけどね」と少し悲しげ。しかしこの日は「あいつの背中を見て頑張ってきた。成長できた」と号泣した。翁田は「西沢は最後まで自分のわがままを聞いてくれた」。3年間クラスが一緒だった2人。最後に初めて相手への感謝の気持ちを明かした。【辻敦子】