<全国高校野球選手権:日大山形4-3明徳義塾>◇19日◇準々決勝

 日大山形は明徳義塾(高知)に競り勝ち、県勢初の4強。今日20日は休養日で、準決勝は21日に行われる。

 ほとばしる思いを、こん身のスイングに込めた。同点とした直後の8回2死三塁。4番奥村が敬遠され、5番吉岡の目の色が変わる。「ナメられていると思って、イライラしてました」。2球目。139キロ直球を引っ張り右前に運んだ。それまでの打席では内角攻めに差し込まれていたが、「頭にあった」という内角速球をうまくさばいた。

 雪深い山形で振り込んできた成果が出て、3度先行されながら追いついた。3回に1番青木が、6回には4番奥村が右中間に適時三塁打を放つ。8回、左中間に同点の適時三塁打を放った3番峯田は「半端なスイングはしない」と胸を張った。昨年最後の練習は2013回の素振りで締め、年が明けてからは1時間振り続けてきた。日大三(西東京)との2回戦、作新学院(栃木)との3回戦は2ケタ安打。甲子園優勝経験校を打力でねじ伏せてきた。

 “地獄のランニング”が、チームを変えた。センバツ出場を逃し、今春は県大会8強止まり。転機は6月の仙台育英との練習試合だった。食らい付こうとする姿勢も見せられず、3-11で大敗した。荒木準也監督(41)は激怒し、帰り道のインターチェンジで選手をバスから降ろした。9番板坂は「周りは山だけで何もないところ。20キロくらいを2時間かけて走って帰った」と振り返る。これが、連勝街道のスタート地点だった。

 近年、レベルが上がったと言われる東北でも、山形は1歩遅れている感があった。昨夏まで県勢は6年連続初戦敗退。85年の東海大山形がPL学園(大阪)に喫した29失点は大会記録で、県議会の議題に上がったほどだった。峯田は言う。「大阪に来る前、街を歩いていて『甲子園で1勝しろよ』と言われたのが悔しかった」。

 目標も当初のベスト4から、東北勢初の日本一に上方修正した。「塗りかえられない記録をつくろう」(荒木監督)。そう言えるだけの力が、今の日大山形にはある。【今井恵太】