<高校野球南北海道大会:札幌第一6-5札幌工>◇3日◇札幌地区Eブロック3回戦◇札幌麻生

 2年ぶりの夏甲子園を狙う札幌第一が札幌工にサヨナラ勝ちを収めた。初回まさかの4点のビハインドも、7回に5-5の同点に追いつくと9回裏に主将の近沢欣樹(よしき)三塁手(3年)が左翼席に決勝弾を打ち込み、決着をつけた。2回途中から救援した石橋健吾投手(3年)も7回1/3を4安打1失点15三振の力投を見せ、逆転勝ちにつなげた。

 最後は主将の意地だった。近沢は高めに浮いた球を振り抜くと、低い弾道で左翼席に刺さった。それまでおとなしかった札幌第一ベンチがやっと湧いた。ナインが歓声を上げて飛び出した。近沢は唇を結んだまま、喜ぶナインの出迎えを受けた。主将の顔に笑みはなかった。

 苦心惨憺(さんたん)してつかんだ勝利だった。「ほっとしました。相手投手の緩い球に少し芯をずらされてフライを打ち上げてしまいました」、近沢は言葉を絞り出した。初回に思わぬ4失点。誤算で始まった。守りが乱れ、流れが相手に傾いた。ベンチでは小玉和幸部長(39)が「下を向くな、少しずつこっちに来てるぞ。腹をくくれ、勝負だ」と大声を出し続けた。

 初回に続き2回も2死二、三塁のピンチ。マウンドに立った3番手の石橋が踏ん張った。気迫の投球で三振。5回に1点を献上したが15三振を奪い、流れを引き寄せた。「苦しかった。ここは自分が抑えるしかないと思って投げました」。チームは3年生が入学した12年夏に甲子園出場。石橋はベンチで、それ以外の3年生はスタンドで応援した。エースが崩れ、2番手も降板。最後のとりでとなった石橋の「甲子園に戻りたい」という強い思いが球に込められた。

 初戦の石狩南戦後、菊池雄人監督(42)は「まだまだ甘い。強い思いを持ち、3年生を中心にまとまれば、良くなるでしょう」と話していた。まさにそれを試された。近沢主将と石橋は「1試合1試合、集中したい」と表情を引き締めた。苦戦がチームの結束をさらに強固にしたことは間違いない。【中尾猛】