<高校野球静岡大会:富士市立5-0藤枝東>◇19日◇1回戦◇焼津球場

 目を見張るノーヒットノーランだった!!

 昨夏4強の富士市立はエース藤井聖(まさる=3年)が藤枝東相手に無安打無得点を達成。与えた走者は3四球と味方の失策1人のみに抑え、5-0で完勝した。初回から最速138キロの直球と変化球で打者を翻弄(ほんろう)。5者連続を含む自己最多の18三振を奪った。2回戦は今春の県大会で敗れたシードの東海大翔洋と対戦する。

 藤井は何事もなかったように試合を締めた。最後の打者を右飛に打ち取ると、ガッツポーズをすることもなく、顔色一つ変えずに整列に加わった。大記録の達成は試合後まで気付かず、報道陣から質問されるまで「知らなかったです」。自身の投球を淡々と振り返ると、ようやく笑みを浮かべ「初めてだったのでうれしい」と喜びに浸った。

 初回に3者連続三振で勢いに乗った。その後も直球を低めに集める。決め球にはスライダーとカーブを使い分けて三振の山を築く。4回の2人目からは5者連続。8回に味方が4点を加えて降板する予定だったが「自分で試合を決めたかった」と、最終回も志願してマウンドに立った。

 春の県大会1回戦で記録した15奪三振を上回る自己最多の18奪三振。中学までは外野手だったが、高校から投手に転向した。昨夏はメンバー入りを果たすも、登板機会はゼロ。遅咲きながら夏1勝を挙げた左腕は「三振を取れるピッチャーではないんですが…。今日は真っすぐが走っていた」と照れ笑いした。

 神奈川出身の藤井は親元を離れて同校に入学した。この日は両親がスタンドで観戦。幼いころは気管支が弱く、入退院を繰り返すほど病気がちだった。野球を始めた小学3年までは琴を習っていたという。母の紀代子さん(49)は「運動ができる子ではなかった。野球を通じて強くなってくれました」。父の基安さん(57)も「ビックリですね」と、たくましくなった息子の成長ぶりに目を細めた。

 2回戦は春の県大会で敗れた東海大翔洋と対戦する。「必ず勝って優勝を目指したい」。リベンジに燃えるエースは少ない言葉に闘志を込めた。【神谷亮磨】

 ◆藤井聖(ふじい・まさる)1996年(平8)10月3日、神奈川県海老名市生まれ。小3から海老名フレンズで野球を始め、中学時代は瀬谷リトルシニアに所属。高校入学時にセンターから投手に転向。175センチ、73キロ。血液型O。家族は両親と兄。