<高校野球群馬大会:高崎健康福祉大高崎6-2前橋育英>◇20日◇3回戦◇高崎市城南

 昨夏の甲子園優勝投手、前橋育英のドラフト上位候補、高橋光成投手(3年)は3回戦で敗退した。

 泣き崩れる選手たちの中で、高橋は1人、その目に焼きつけるかのようにホームベースを見つめていた。「期待にこたえなくてはという気持ちでした」と、必死に腕を振り続けた最後の夏は、3回戦で幕を閉じた。

 訪れたプロ11球団35人のスカウトの前で、直球は自己最速にあと1キロに迫る147キロを記録した。6回裏1死二、三塁のピンチでは、こん身の146キロで2者連続三振。誰もが全国V投手の復活を予感したが、2点リードの7回に悪夢が待っていた。

 2死満塁から押し出し死球で1点差とされると、続く3番脇本への3球目だった。「しっかり投げましたが、甘くなってしまった」と変化球を右前に運ばれ、逆転を許した。4番柴引にも中越え2点適時打を許し、失策も重なって一挙6失点。味方の援護を信じて完投したが、思いは届かなかった。

 1月に右手親指を骨折しスタミナ不足が懸念されていた。昨夏の主力は大半が卒業し、重圧とも闘ってきた。「ケガをしたとき、仲間が声をかけてくれました。支えてくれた人のために勝ちたかった。甲子園に連れて行ってあげたかった。力不足で申し訳ないです」と涙をこらえ、声を絞り出した。

 進路はプロ1本。荒井直樹監督(49)も「本人の気持ちを尊重します」と背中を押す。目指す投手像は「どんな試合でも負けない投手」。悔しさを糧に、さらなる高みを目指す。【岡崎悠利】

 ◆下級生V腕の翌年

 新制高校となった48年以降、夏の甲子園で下級生の優勝投手は前橋育英・高橋光成まで12人いた。中退してプロ入りした浪商・尾崎行雄を除く11人のうち、翌年も甲子園に出場したのは4人だけで連続出場は難しい。