<高校野球北北海道大会:武修館8-5釧路工>◇24日◇決勝◇旭川スタルヒン

 武修館が創部40年目で初の甲子園切符を手にした。釧路工を破り、北北海道大会史上初の釧路対決となった決勝を制した。

 武修館監督に就任して115日、小林正人監督が26歳で栄冠をつかんだ。歓喜に沸く一塁側応援席にあいさつを終えるとすっとベンチ裏に消えた。泣いた。戻って監督インタビューのお立ち台へ。「38人全員が力を合わせた結果、甲子園でも38人で感動を与えられるような試合ができたらと思います」。晴れやかな顔のほおに拭き残した涙が光った。

 試合前のベンチで小林監督は、自身の野球人生を語った。北海道尚志学園高では3年間、1度も全道の舞台を踏めなかったこと、北海学園大で札幌6大学野球2部に落ちたことなど「1、2分でしたけど聞いてくれました」。ナインは「やってやろう、監督を胴上げしよう」と心に秘めた。

 昨年秋、知人を介して武修館が監督を募集していることを知り応募。4月1日に監督に就任した。その際、ナインの前で前監督の流れを引き継ぎ(1)目的は人間形成(2)目標は甲子園(3)全員野球、の方針を宣言した。選手時代や指導者として日の当たることがなかったときに土台ができたという。そこで学んだことが礎となり、全員で喜びも悲しみも分かち合う「全員野球」にたどり着いた。

 選手のいる下宿の隣に住み、朝、夜の食事をともにする。お昼の弁当も同じおかず。「グラウンドでは見せない顔が見えます」。濃密なコミュニケーションが、采配を支えた。「選手のおかげ、日に日に成長しています」。穏やかで、誠実な青年監督が、聖地に向かって第1歩を踏み出した。【中尾猛】

 ◆小林正人(こばやし・まさと)1987年(昭62)10月17日、札幌市生まれ。父正男さん(64)が少年野球の円山リトルジャイアンツ(札幌)の指導者(18年前からは監督)で、6歳で野球を始める。北海道尚志学園、北海学園大を経て北海学園札幌の専任教師となり、野球部コーチも務めた。今年4月に武修館の国語教諭となり、野球部監督に就任。独身。