<高校野球和歌山大会:市和歌山3-2智弁和歌山◇26日◇決勝◇紀三井寺

 市和歌山が劇的なサヨナラ勝ちで、智弁和歌山を破って10年ぶり4度目の甲子園を決めた。初回に先制されたが7回に追いついて延長戦へ。11回に1度勝ち越されたが、直後に追いつく粘りを見せ、12回に瀬戸口麗一塁手(3年)の左前打で勝利を決めた。驚異の粘りで強豪を倒した勢いを甲子園にぶつける。

 校歌を聞き終えると、市和歌山ナインが何重にも抱き合い涙した。「夢みたいや」。そんな言葉も飛び出る逆転勝利だった。半田真一監督(34)も「選手たちがすごいなと。粘り強くここまでの野球がやれるとは」。涙は止まらなかった。

 初回1点を先制されても、気持ちは切らさなかった。半田監督はベンチで「お前らならできる」とナインに声をかけ続け、その後は無失点に抑えた。7回に大島空也左翼手(3年)の中前打で追いつき延長戦へ。11回に1点を奪われたが、その裏に代打阿部一将(2年)の中前適時打で食らいついた。12回裏1死一、二塁、瀬戸口の打球は左前に。サヨナラ勝ちで2時間42分の熱い試合を決めた。

 半田監督は、それまで5打席無安打と調子の悪かった瀬戸口に、代打を送ることも考えていた。「『3年生の意地で行けるか?』と聞いたら『行けます』と返ってきたんで」。力強い返事を信じて送り出した。瀬戸口は小5の時から野球を始め、父秀一さん(47)と毎日公園でバッティング練習。「けがをしないように」と柔軟体操も続けてきた。この日も、その柔らかい体を生かして難しい送球もキャッチ。堅い守備に貢献した。昨夏は初戦で智弁和歌山に負け、その悔しさを糧に1年間練習を続けてきた。「智弁和歌山を倒して甲子園に行く」と言って、市和歌山に入学。夢を自分のバットでかなえた。

 半田監督は「松坂世代」で市和歌山商野球部の出身。「(自分は)県大会初戦で負けました。ブラウン管の前で『PL対横浜戦、すげえ』って見てました」。現役時代にかなわなかった夢を、教え子たちがかなえてくれた。10年ぶりだが、市和歌山に名前が変わってから初の甲子園。強豪・智弁和歌山を倒しての出場に「あのチームをなんとか…と思ってきた。勝てたことは自信になる」。甲子園に新たな風を吹き込む。【磯綾乃】

 ◆市和歌山

 1957年(昭32)、和歌山市立和歌山商として創立した市立校。09年普通科設置で現校名に。生徒数は779人(女子512人)。野球部は57年創部、部員は57人。甲子園は市和歌山商で春4度、夏3度。OBには藤田平元阪神監督ら。所在地は和歌山市六十谷45。山本昌之校長。◆Vへの足跡◆2回戦3-2和歌山高専3回戦11-1田辺工準々決勝7-3向陽準決勝4-1和歌山商決勝3-2智弁和歌山