<全国高校野球選手権:八戸学院光星4-2武修館>◇17日◇2回戦

 持ち味は存分に発揮した。初出場の北北海道代表・武修館が春夏準優勝3度を誇る八戸学院光星(青森)に逆転負けし、初戦突破の夢ははかなく散った。4回に盗塁と相手失策に付け込み無安打で先制。無失策の好守備と3投手の継投で7回まで無失点に抑え、互角の勝負を演じた。8回に4点を奪われて初勝利は逃したが、強豪相手に聖地で堂々と戦い抜いた。

 ほどよい緊張感が、高い集中力を生んだ。集大成の甲子園で、武修館ナインの心が1つになった。1回、先頭打者の鋭い打球を榎森駿也中堅手(2年)が体勢を崩しながらダイビングキャッチすると、2死後、右翼手の岡本滉己(3年)も安打性の飛球を追いかけ、地面すれすれのところでグラブに収めた。試合開始早々に生まれた2つのビッグプレー。試合の流れをがっちり引き寄せ、強豪相手に互角に渡り合う自信につながった。

 予選では出場全49校中最多の12失策で不安視されていた守備がこの夏、初めての無失策で試合を盛り上げた。「風が強くてボールがよく見えなかったけど、先頭は絶対に出したくなかった」と口にする榎森は、4回にも右中間への当たりを好捕して、投手陣を助けた。8回、エース徳橋颯野(2年)が相手打線につかまり逆転負けは喫したが、小林正人監督(26)は「みんな思った以上のプレーをしてくれた」と、理想的な全員野球を見せたナインの成長に、胸を熱くした。

 当初、チームはバラバラだった。今年2月、ポール間走300本のメニューに、千葉祐也主将(3年)を除く選手が「やってらんねぇ」とボイコット。千葉は1人で、夜9時まで走り込んだ。

 そんなチームを変えたのが、今年4月に就任した小林監督だった。就任してすぐ「1年目から甲子園を目指す」と宣言。目標が明確になった。「今なら全員一緒にポール間を走ってくれると思います」と千葉が誇る一体感で、八戸学院光星を終盤まで苦しめた。

 代々、主将が受け継ぐお守りがある。試合後、悔し涙を流した千葉は「甲子園の土をこの中に入れて、次のキャプテンに渡す。自分たちみたいに初戦負けしないでほしい」と、そのお守りを握りしめた。釧根地区の悲願でもある夏の甲子園1勝を、後輩へと託した。【保坂果那】