<高校野球福岡大会>◇24日◇決勝

 西日本短大付の「鉄腕」が甲子園切符をつかんだ。西日本短大付が東福岡を4-0で破り、6年ぶり5度目の甲子園出場を決めた。2年生エース森達也が東福岡を5安打完封。初戦から7試合60イニングすべてを1人で投げきり、甲子園出場の原動力となった。

 こん身の力を決めた120キロの直球がミットに収まった。西日本短大付のエース森が両手を上げてマウンドで跳ねた。「やっと終わったと思いました。それから、うれしい気持ちがわいてきました」。この夏865球目の直球で最後の三振を奪い、福岡133校の頂点に立った。

 5日間で4完投。体力は限界を越え、残っているのは気力だけだった。「握力もなくなってしまって」。3四死球を出すなど制球に苦しんだが、最後まで逃げずに内角を攻め、スライダーとチェンジアップで空振りを奪った。4回2死一、三塁で右前打を許したが、鹿野和大右翼手の好返球でピンチをしのぎ、5、6回も二塁まで走者を進めたが粘り強く抑えた。「よく投げましたね。いつ森が打たれるかと思って見ていました。最後の直球は気持ちがこもっていましたね」。2年生左腕にかけた西村慎太郎監督(39)も、その鉄腕ぶりに驚嘆の声をあげた。

 18年前も1人でマウンドを守るエースがいた。92年全国制覇したときのエース森尾和貴さん(36)は甲子園5試合をすべて1人で投げ抜いた。93年生まれの森は当時の優勝を知らない。それでも昨秋、福岡南部大会準々決勝で敗れた後、西村監督から「甲子園に行ったエースはみんな1日20キロ走っていた。森尾も疲労骨折寸前まで走っていたぞ」と聞かされ、毎日20キロの走り込みを続けた。ラジオ解説で決勝を観戦した森尾さんは「右と左で違うけど、球は速くなくても緩急で打ち取る姿は自分と同じ」と、後輩に当時の自分の姿を重ねた。

 最速は130キロ程度。それでも持ち前の制球力と緩急で県内の強豪校を次々と破ってきた左腕が、全国の強豪と対戦する。「甲子園でも1つ1つ勝ち上がって日本一になりたい」。174センチ、74キロの鉄腕が、マンモスを熱くわかせる。【前田泰子】