第92回全国高校野球選手権大会(甲子園球場)が7日開幕、第3試合で東北勢の先陣を切り八戸工大一(青森)が、初出場の英明(香川)と対戦する。夏の甲子園初白星のカギを握るのは持ち前の機動力で、地区大会19盗塁は出場校中3位。国体スピードスケート500メートル7位入賞の実績を持ち、チーム1位タイの5盗塁を誇る中村晃大二塁手(3年)が伝統の機動力野球を引っ張る。

 真冬のヒーローが酷暑の甲子園に降り立つ!

 八戸工大一の中村は野球とスケートの二足のわらじを履いて10年になる。高1時には地元で開催された八戸国体に出場。スピードスケート男子500メートルで7位入賞を果たした。冬季種目のスペシャリストでは飽き足らず、今度は日本中が注目する甲子園に上り詰めた。

 伝統の機動力野球は中村の足が支えている。5盗塁もそうだが、得点もチーム1の「10」。出場チーム中3位の盗塁数を誇る同校は、日ごろから走塁の実戦練習を行う。「走塁死しても怒らない」という長谷川菊雄監督(33)の方針が機動力に磨きをかけている。

 50メートル6秒1という中村の俊足は、スケートなしでは語れない。「正直、練習はスケートの方がつらい」。チームスポーツの野球と違い、常に自分との闘いとなる練習をこなし「克己心」を磨いてきた。春夏は野球、秋冬はスケートと休む間をつくらない。だが「野球で日本一を目指したい」との思いで昨秋からは野球に専念してきた。

 その成果は如実に表れた。県大会準々決勝(八戸西戦)で2ラン、準決勝(青森工戦)で3ランを放ち、12年ぶり5度目の甲子園へ導いた。勢いそのままに夏初勝利をもぎとりたい。

 バンクーバー五輪スピードスケート男子500メートル銅メダリストの加藤条治(25=山形中央)からは高1時に「頑張れよ」と声を掛けられた。来年のスケート国体も八戸で開催予定だが「出場を目指すかはまだ決めていない。今は甲子園で日本一を目指すだけ」と力強い。中村が出塁すれば、聖地のダイヤモンドは、高速リンクと化す。【三須一紀】