ヤンキース田中将大(2018年10月9日撮影=菅敏)
ヤンキース田中将大(2018年10月9日撮影=菅敏)

野球選手が試合前にどんなルーティンをしているのかというのは、普段我々の目に触れないだけに興味深い部分だが、先日、ヤンキース田中将大投手がイベントの席で、登板当日の試合前のルーティンについて明かしてくれた。

例えばホームで夜7時過ぎ開始のナイトゲームに登板する場合「朝食はもちろん取るんですけど、昼食をしっかりとって、それが1時半~2時くらい。家を出るのが3時」。4時までに球場に到着し「ラインアップが出ていればそれと照らし合わせて映像やデータを見ながら時間をつぶす」。4時半前から投手コーチ、捕手とのミーティングを行い「5時くらいから湯船につかって体を温めて、それからウオーミングアップ。6時くらいから肩のストレッチをトレーナーさんにやってもらって、クリームとかを塗ったりして、6時20分過ぎくらいから自分のモチベーションビデオみたいなのを観る」という。それから試合開始約30分前にフィールドに出てキャッチボール、ブルペンでウオーミングアップを行い、マウンドへと上がる。

この中で特に興味深かったのは、試合開始45分前にモチベーションビデオを観るというメンタルトレーニングの部分だ。お風呂につかるのも癒やし効果があるので、メンタル面に効果のあるルーティンともいえるかもしれない。メジャーでは近年、メンタルトレーニングが重視されており、昨季は30球団中26球団がスポーツ心理学の専門家やメンタルスキル・コーチと呼ばれる精神面の指導者を雇っている。8年前と比べると1・3倍増だという。

選手の中には非常にユニークなメンタルトレーニング法を取り入れているケースもあり、カブスのベテラン先発左腕ジョン・レスターもその1人だ。同投手は登板当日の試合数時間前、「00」から「99」までの数字を並べるパズルをして集中力を高める。クラブハウスでそれをやりながら、同時に1球1球への集中力を高める音声プログラムを聞き、さらに仮眠室でヘッドホンを付け呼吸エクササイズを行う。試合前には1回から2~3イニングを実際に投げるシミュレーションを頭の中でするそうだ。

レスターがメンタルトレーニングに関して影響を受けたのが、レッドソックスで長年スポーツ心理学担当コーチを務めた元投手のボブ・テュークスベリー氏。同氏は現役引退後にボストン大学で心理学の修士号を取得し、昨年「90%メンタル」という野球心理学の本も出版し、その道の専門家として名をはせている。その恩師が、今季からカブスのメンタル技術責任者に就任し、再びレスターを身近で指導することになった。カブスの他の選手たちにもどんな影響があるのか、注目したいところだ。【水次祥子】(ニッカンスポーツ・コム/MLBコラム「書かなかった取材ノート」)

ヤンキース田中将大(2018年10月6日撮影=菅敏)
ヤンキース田中将大(2018年10月6日撮影=菅敏)