ドジャース・カーショー(2018年10月23日撮影=菅敏)
ドジャース・カーショー(2018年10月23日撮影=菅敏)

メジャーは今年のオープン戦で投球の20秒制限ルール「ピッチクロック」を試験的に導入したが、トップクラスのベテラン投手から反発の声が続々と上がっている。

ドジャースのエース左腕クレイトン・カーショー(30)は「20秒ルールに気を使うつもりはまったくない。時間オーバーするときはするし、何も変える気はない」と宣言し、昨季ナ・リーグ最多タイの18勝を挙げたカブス左腕ジョン・レスター(35)は「野球の醍醐味(だいごみ)が奪われる。野球はスピードアップするようなものではないし、変えることはできない」と意見。4度の最多勝と2度のサイ・ヤング賞に輝いたナショナルズ右腕マックス・シャーザー(34)は「ピッチクロックの導入などあってはならないこと。投球にかける時間がストライク、ボールに影響するなら、野球の基礎構造が崩れる。野球に時間制限はないし、時間制限がないことには理由がある」と力説した。

一方、若い投手からは反発の声がほとんど聞こえてこない。ピッチクロックのルールはマイナーリーグで15年から導入されており、慣れている選手が多いためだろう。昨季からは2Aと3Aで走者なしの場合が15秒、いる場合が20秒と、さらに厳しいルールに変わっているため、それを経験した投手にとってはアジャストに何の問題もなさそうだ。今後、マイナーで厳しい時間制限に慣れた投手がどんどん昇格してくれば、いずれは反対派が少数派になり、メジャーでも導入される可能性が高くなる。

反発の声が大きい今、オープン戦で突然テスト導入したのは、今季レギュラーシーズンを見据えてというより、選手会との間で協議しているその他ルール変更案を飲ませるための交渉カードにしている節がある。20秒ルールの導入をあと3年先送りにする代わりに、選手会から他案の合意を得ようとしているという報道も実際に出てきた。あるいはベテランから反対意見が噴出したのを見て、現時点での導入は厳しいと悟ったのだろうか。

ちなみにメジャーの昨季平均投球間は24・1秒(走者ありの場合も含む)。球団で最も長かったのがエンゼルスで平均25・6秒。投手個人では、規定投球回に達した先発投手で最も長かったのがアストロズのエース右腕ジャスティン・バーランダー(36)で27秒。日本投手ではヤンキース田中奨大投手(30)が27・0秒、カブスのダルビッシュ有投手(32)は17年のデータで26・4秒だった。リリーフではヤンキースの抑え左腕アロルディス・チャプマン(30)が29秒、昨季レッドソックスで42セーブを挙げた右腕クレイグ・キンブレル(30=現在FA)が27・9秒とかなりスロー。彼らにとって、アジャストするのは容易なことではなさそうだ。【水次祥子】(ニッカンスポーツ・コム/MLBコラム「書かなかった取材ノート」)

ナショナルズ・シャーザー(2016年4月21日撮影)
ナショナルズ・シャーザー(2016年4月21日撮影)