9月18日付のこのコラムでエンゼルス大谷翔平投手(27)のMVP争いで注目すべきWAR(ウイン・アバウブ・リプレースメント)ということで特にデータサイト「ファングラフス」のfWARについて書いたが、レギュラーシーズンが終了し意外な結果になった。

シーズンを2週間残した時点で大谷のfWARは7・3。大谷とMVPを争うブルージェイズのウラジーミル・ゲレロ内野手(22)は終盤に追い上げ6・5と迫っていた。しかしシーズンが終了した時点で大谷は8・1で両リーグトップを維持し、ゲレロの方は本塁打王争いでトップタイの48本を放つ活躍だったが、6・7とあまり伸びなかった。ア・リーグでは2位の数字だが、ずいぶん差がついている。

両リーグ2位は今季11勝5敗でリーグ最優秀防御率の2・43をマークしたブルワーズの先発右腕コービン・バーンズ(26)で7・6。3位が今季14勝10敗、防御率2・78でリーグの奪三振王に輝いたフィリーズの先発右腕ザック・ウィーラー(31)で7・4。4位がナ・リーグ首位打者で盗塁王のドジャースのトレー・ターナー内野手(28)で6・9、そして6・7のゲレロが5位に続く。1人だけ8以上をマークしている大谷は、頭ひとつ抜けているという印象だ。ファングラフスはシーズン前に各選手のWAR予想も出しているが、大谷の予想は何と2・7。予想より実際のWARが上回った選手の中でも大谷は断トツで予想の数字を超えており、いかに万人の想像をはるかに超えたパフォーマンスをやってのけたか、その数字からうかがえる。

さてこのWARは、年俸を見積もるときにも活用されている。ファングラフスでは「勝利のコスト」として$/WARという指標を作り、これによってその選手に見合う年俸額を割り出している。1WARがいくらに相当するかは諸説あるが、今のところFA市場では1WAR=約800万ドル(約8億8000万円)という認識が優勢のようだ。

というわけで、もし大谷がFAになったら、大変なことになりそうだ。シーズン終盤で大谷が「もちろんファンの人も好きですし、球団自体の雰囲気も好きではあるので。ただそれ以上に勝ちたいっていう気持ちが強いですし、プレーヤーとしてはその方が正しいかなと思ってます」とコメントした際、米メディアは「勝てるチームを作らなければ、大谷は出て行く」とちょっとした騒ぎになった。このとき、大谷の今季のWARを見て、FAになった場合の金額を想像した人は多かっただろう。エンゼルスが契約を延長できるのかと心配するファンもいたはずだ。

今のところ、大谷は来季までの契約は決まっており、FAの資格を得るのは再来年のシーズン後。どうなるのか大いに注目される。【水次祥子】(ニッカンスポーツ・コム/MLBコラム「書かなかった取材ノート」)