エンゼルスのミナシアンGMが先日の会見で、地元メディアと禅問答のような絶妙なやりとりをしていて面白かった。議題はもちろん「ショウヘイ・オオタニの今後」についてだ。

二刀流としてブレークしさらに進化を続ける大谷翔平投手(28)は、今季終了後にFAとなる。米国ではすでに大谷の去就を巡る報道合戦が始まっているが、エンゼルスは大谷と契約延長交渉はしているのか、それともこれからする予定はあるのか。モレノ・オーナーは1月下旬に球団売却を突如として撤回したが、大谷と契約延長するつもりなのか否か。メジャー史上最高額の5億ドル(約650億円)超えが濃厚といわれるが、モレノ・オーナーはその額を出せるのか。出すとすればぜいたく税回避の上限を超えることが確実だが、それをやれるのか。

現地の記者からはそれらの疑問が次々と投げかけられた。ミナシアンGMは、契約延長を現在しているかの問いには「ノー」と明確に答えたが、同オーナーがぜいたく税上限を超えるつもりがあるか否かに関しては「オーナーはこれまで、常に球団に十分な投資をしてきた。ずいぶん前から総年俸は30球団中で上位10位に入っている」との答え。地元メディアからは「質問に何も答えていない」と不満の声が上がっていた。モレノ・オーナーが身売りを撤回してから公の場で何も発言していないため、ミナシアンGMとしても何も言えない苦しい立場だ。

しかし身売り中止後、大谷の去就にまつわる報道合戦はすさまじいものがある。特に“攻めている”のはニューヨーク・ポスト紙だ。球界事情通として知られるジョン・ヘイマン記者が1月30日付で書いた記事には「メッツ球団内部のある人物がこう言っている。メッツはショウヘイ・オオタニをスポーツ史上最も高額な選手にするだろう。彼がメッツを選ぶかどうかは別として、その金額は正気を疑うレベルだ。そのオファーを超えようという球団が他にあるなら、見てみたいと」とインパクトのある内容がつづられていた。同記者はこの記事を皮切りに、その後3日に1本くらいのペースで大谷去就に関する記事を執筆し続けているのだから、関心の高まりが尋常ではない。

この報道合戦は大谷が次の契約を結ぶまで続くことになるが、エンゼルスが今季開幕から勝てるチームであることを示し続けなければさらに周囲が騒がしくなる。ミナシアンGMら球団首脳陣にかかるプレッシャーは相当なものに違いない。【水次祥子】(ニッカンスポーツ・コム/MLBコラム「水次祥子のMLBなう」)

大谷翔平(23年1月撮影)
大谷翔平(23年1月撮影)