人口約70万人。800万人を超えるニューヨークと比べると首都ワシントンDCは規模が小さい。だが、86年ぶりに行われたワールドシリーズでは毎試合、約4万4000人で満員となり、大盛況。打席に向かう選手に、子供向けの歌とパフォーマンスを一斉に行うなど、一体感があった。3試合連続1得点で完敗したが、声援は温かかった。

第3戦では、先発サンチェスが5回途中4失点で降板。不本意な結果でも、大きな拍手とスタンディングオベーションがあった。

7年前のプロ野球、楽天と光景がダブった。ヤジは少なく、多くのファンは優しく見守っていた。当時の監督で18年に亡くなった星野仙一さんは言っていた。「人は強いものに憧れる。特に子供たち」。信念と厳しさを貫き、13年に球団初の日本一に導いた。勝つチームに育て、仙台に新たな野球ファンを生んだ。

地元ワシントンの記者は、野球熱についてニューヨークと比較した。「ここは33年間、チームがなかった。野球を見られなかった子供たちが、今のファン。ビジネス、政治、デジタル戦略などの知識は深いが、ニューヨークのファンほど野球を語る知識がないのだと思う」。

72年から04年まで、球団が不在だった。その時代に育った子供が、現在の30~50代。最高峰の戦いとなれば、一時的にファンは集まる。だが、強くなければ根付かない。再び首都で野球を発展させるため「ナショナルズ世界一」のタイトルが、その第1歩となった。【斎藤庸裕】(ニッカンスポーツ・コム/MLBコラム「ノブ斎藤のfrom U.S.A」)