近い将来、ゴジラ松井が監督になったら、長嶋タイプ? ジョー・トーリ・タイプ? それとも…。

 ヤンキース、巨人などで活躍した松井秀喜氏(43)が先日、ニューヨーク市内で地元の少年たちを対象とした野球教室を開催しました。現役引退後、野球の普及を目的とした「Matsui 55 Baseball Foundation」と名付けた基金を設立。現在も自宅のあるニューヨークを中心に、ロサンゼルスなどの西海岸、さらにオフ期間には日本でも開催し、今回は早くも13回目となりました。

 毎回、松井氏は少年たちにキャッチボール、捕球の基本姿勢を指導するほか、自ら打撃投手を務めるなど、積極的に触れ合っています。終了後は、質疑応答、ミニサイン会、写真撮影を行うなど、野球指導だけでなく、元メジャーリーガーとの交流を通して「野球に興味を持ってもらうこと」(松井氏)を最大の目的にしています。そんな思いで開催している野球教室ですから、こと細かい技術指導をするというわけでもありません。

 ただ、松井氏がプロの監督やコーチになった場合、どんな指導者になるのでしょうか。

 松井氏といえば、巨人時代、長嶋監督との間で行われた徹底的なマンツーマン指導が有名です。昼夜、場所を問わず、松井氏が汗だくになるまで素振りを繰り返し、日本を代表するスラッガーに成長した逸話は、野球ファンならずともご存じの方は多いでしょう。実際、打撃技術の話になると、松井氏は恩師長嶋氏と同じように「感覚」という言葉を頻繁に使います。ヤンキースのGM付特別補佐を務めていることもあり、傘下マイナーの3A、2Aで巡回指導もしていますが、そこでも「自分で感覚をつかむこと」を、成長のポイントに挙げています。だからといって、「ひらめき采配」「カンピューター」と言われた長嶋氏のような戦略、戦術を使うタイプとも少し違うような気がします。

 そういう意味では、ヤンキースへ移籍した当時の監督だったジョー・トーリ氏の姿は、松井氏の脳裏に焼き付いているように感じます。常に周囲を冷静に観察し、熟考し、選手をリスペクトするのが同氏のスタイルでした。細かい技術指導というよりも、各選手の自主性を重んじ、プロとしての高い意識を求めたのがトーリ氏でした。

 性格的には、いつも朗らかで温厚な松井氏ですが、その一方で、基本的に他人から強制されることは好みません。18歳だったプロ1年目。某大物OBから打法改造を指導された際、「僕には合わないですから」と耳を貸さなかったほど、頑固な一面も持ち合わせています。時折のぞかせる、そんな頑固さは、裏を返せば、松井氏の胸の内にある「厳しさ」の一端なのではないでしょうか。

 天真らんまんな長嶋氏と、冷静沈着なトーリ氏。2人の恩師をミックスしたような指導者こそ、松井氏が思い描く理想の監督像なのかもしれません。

【四竈衛】(ニッカンスポーツ・コム/MLBコラム「メジャー徒然日記」)