2017年のワールドシリーズを制したアストロズのサイン盗み問題が、GM、監督解任などの処分決定後も依然として米球界で話題となっています。

当時、先発ローテーションの柱として活躍した左腕ダラス・カイケル(現ホワイトソックス)が、在籍していた選手として初めて公の場で謝罪するなど、多数の選手が今回の問題についてコメントし始めました。その中で、告発のきっかけとなる証言をしたマイク・ファイアーズに対し、カイケルが「クラブハウス内のルールを破ったことに関しては残念だ」と批判的な言葉を残したことが、さらに論議を呼んでいます。

先発右腕ファイアーズは2015年から3年間、アストロズに所属し、17年は8勝10敗。もっとも、ポストシーズンでは登板機会がなく、オフにはFA(フリーエージェント)で退団。昨季は、アスレチックスの柱として自己最多の15勝(4敗)を挙げたほか、5月7日のレッズではノーヒッターを達成するなど自己ベストのシーズンを送りました。

今回、ファイアーズがどのような経緯で、スポーツメディア「ジ・アスレチック」の取材を受け、証言することになったのかは不明です。カイケルが言うように、たとえ移籍しても、各球団内の決まり事などを口外しないのは、プロ球界の暗黙のルール。今季でメジャー10年目を迎えるベテラン右腕がそんな常識を知らないはずもなく、自らの証言が大きな波紋を呼ぶことは想定していたはずです。匿名で証言することもできたのでしょうが、となると「密告者」のようになってしまいます。あまりにも極秘の機密事項だったこともあり、実名での証言に踏み切るまでには、相当な覚悟が必要だったはずです。

実際、球界内外の反響は大きく、不正を暴いた勇気ある発言と、賛辞の声も多く聞かれます。その一方で、退団後ではなく、在籍中に証言するべき、チャンピオンリングを返上すべき、との批判もあります。ファイアーズ自身は、「その件について、今は話したくない。過去ではなく、今のこのチームのことにフォーカスしたい」とコメントしています。

同じア・リーグ西地区でプレーするだけに、ファイアーズが今季、敵地ヒューストンで登板する可能性もあります。

いずれにしても、今回のサイン盗みの話題は、もうしばらくは収束しそうにありません。【四竈衛】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「四竈衛のメジャー徒然日記」)

アストロズのサイン盗みを暴露したマイク・ファイアーズ(2019年3月20日撮影)
アストロズのサイン盗みを暴露したマイク・ファイアーズ(2019年3月20日撮影)