難航していた労使間の交渉が終わり、メジャーリーグが7月下旬に開幕することになりました。野球が戻ってくることで、多くのファンが喜びの声を上げています。たとえ無観客試合でも、テレビで生中継が見られるわけですから、楽しみにするのも当然だと思います。ただ、もろ手を挙げて…とは思えないのが現実です。というのも、米国では依然として新型コロナウイルスの感染が、爆発的に拡大しているからです。

一時、危機的な状況だったニューヨークなど北東部の大都市では、徐々に終息へ向かっていますが、フロリダ、テキサス、アリゾナ、カリフォルニアなどでは現在も、1日に3000~5000人もの新たな感染者が判明しています。東京や日本全体と比較すると、まさに桁違いで「爆発的」と言っても過言ではないでしょう。各州では外出自粛を呼びかけていますが、レストランやバーは多くの客でにぎわっていると伝えられています。さらに、マスク着用に反対する抗議デモが起こるほどですから、今後、いつ終息するかは分かりません。

今回、MLB機構は公式戦実施にあたり、健康・安全面に関するガイドラインを定めました。1日2回の検温と問診、かみたばこ、ツバ吐きの禁止などをはじめ、球場でのシャワー禁止、宿泊先のホテルではできる限りエレベーターを使用しない、食事はルームサービスを利用など、細かく規制しています。それでも、密になるバスやチャーター機で移動するわけですから、常にリスクと背中合わせになることは避けられません。

爆発的な感染拡大が続く、フロリダ、テキサス、アリゾナ、カリフォルニアには、計10球団が本拠地を置いています。今季の場合、移動のリスクを軽減するため、リーグにかかわらず同地区内での対戦が組まれる予定ですが、すでにフロリダなどの“危険地域”へ行くことに抵抗感を示している選手がいるとの報道も見られます。実際、メジャーの選手や関係者にも感染が拡大しており、不安が募るのも当然でしょう。

公式戦を実施する上で、労使間の合意はタイムリミットぎりぎりだったと言われています。マンフレッド・コミッショナーをはじめ、球界関係者は開催することを「チャレンジ」と表現しています。

今は、MLBが挑むチャレンジが、無事にワールドシリーズ最終戦まで続くことを祈るばかりです。【四竈衛】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「四竈衛のメジャー徒然日記」)