ドジャース前田健太投手(30)が、メジャー初対戦となったエンゼルス大谷翔平投手(24)を完璧に封じ込めた。

 15年の交流戦以来3年ぶりの打者大谷を2打数無安打1三振に抑えた。古巣カープのある広島が、前日からの大雨によって大きな被害を受けており、心に誓った全力投球を披露。また、この日の朝6時ごろに早穂夫人が第2子長男を出産した。試合は救援陣が打たれサヨナラ負けを喫したものの、5回2/3を3安打1失点と、2児のパパは頼もしい姿で力投した。

 猛暑の中、前田は力を振り絞った。5回1死、大谷の内角を恐れることなく攻めた。カウント1-2からの4球目、93・2マイル(約150キロ)の力強い直球が懐をえぐった。完璧に詰まらせ、遊飛に打ち取った。「左打者に対して投げる攻め方というか、自分の自信のあるボールで勝負するしかない」と大谷との対戦でも自分のスタイルを貫いた。

 抜群のコントロールで大谷を手玉にとった。2回の初対戦でも完勝だった。内角直球、高め直球で2球連続でファウルにさせ、チェンジアップを外角低めに落として3球三振。「捕手との試合前のイメージ通りに投げられた」と、理想的な攻めで打ち取った。

 試合開始時の気温は約42度。汗を目いっぱいかいた。力を振り絞る、2つの理由があった。日本時間6日、豪雨が西日本地域を襲った。プロのキャリアを積んだ広島でも大きな被害が出た。カープに在籍していた14年にも土砂災害が起こっており、前田は「選手が頑張っている姿が励みになると声をかけてもらった。試合がある限り、応援してくれる人たちのために、一生懸命プレーするしかない」と、全力投球の姿を続けて見せていくと誓った。

 個人的にも力を得たことがあった。「今日、子供が生まれました。僕自身も頑張らないといけないなという気持ちがすごく強くなりましたし、そういう意味ですごいパワーをもらいました」。

 登板の約13時間前、朝6時ごろに第2子長男が生まれた。生まれそうとの連絡を受け、ロサンゼルス近郊の病院へ急行。生まれる数分前に到着し、ギリギリで出産に立ち会うことが出来た。「生まれた日に投げるのは、今後、人生で一生ないと思うので、そういう意味で良い思い出になりました」。アナハイムに急ぎ、喜びをかみしめながら腕を振った。「ほぼ寝てない」と睡眠不足に加え、猛暑の中の登板だったが、何よりの力になった。

 サヨナラ負けで6勝目はお預け。それでも「濃い1日になりました」。忘れられない登板になった。【斎藤庸裕】