ニッカンコムのページビュー数で2018年を振り返る「PVでPB~’18球界プレーバック」もいよいよ最終回。今年もっとも注目された野球人は、やはりこの男だった。ランキング1、2位を独占したのは、エンゼルス大谷翔平投手(24)。二刀流成功の鍵は「才能と努力」にあり。キャンプから指導してきたコーチ陣が、そのすごみを語った。

三塁コーチを務めていたディノ・イブル氏は、あらゆる変化に対する大谷の適応の早さに驚かされた。「コーチ陣からこれをやってみようと提案されたことを、すぐに形にして出来る。これまで殿堂入り選手も指導してきたが、翔平のような選手は初めてだ」。野球殿堂入りした元エンゼルスのウラディーミル・ゲレロ外野手と比べても、対応力が圧倒的に早かったという。

実感したのは開幕直前の打撃フォーム変更や、盗塁のスタートの切り方を変えた時だった。すり足打法は実戦で試してからわずか数日で感覚をつかんだ。盗塁も「スタートを切る時に右足を動かさないように」と助言すると、すぐに改善された。この走塁技術は「トラウトだって出来ていない」。メジャー最高の外野手の1人とされる選手でも会得に苦しむ高度なものだ。頭で理解したことを、その通りに体現する力。メジャートップクラスの選手でも難しいイメージの具現化がスムーズに出来る。これが大谷のすごさだ。

身体能力の高さも際立っていた。コンディショニングコーチのリー・フィオーキー氏は「チーム内でNFLの選手になれるとしたら翔平かな。背が高くて、スピードもあって、相手に当たり負けないパワーもある」という。米国で最も人気のスポーツであるアメリカンフットボールは、機敏な動きとフィジカルの強さが求められる。総合的な運動能力を持つNFL選手に最も近い選手として、真っ先に大谷の名前を挙げた。

その身体的な才能を花開かせたのは、努力だ。チャールズ・ナギー投手コーチは「毎日、どうやって試合に臨むか、相手の映像を見て、書き留めて、よく質問もしてきた。新たな野球の世界を理解しようと頑張っていた。入念な準備は尊敬に値する」と称賛した。3月のオープン戦、休養日で出場予定がなかった大谷がベンチに現れ、女房役のマルドナドの隣に陣取った。マルドナドによれば「メジャーの打者を研究するため」だった。そういう姿勢に同コーチは感銘を受けた。

大谷にとっても、開幕前が最も大事な時期だった。1年目で一番印象に残っていることを振り返り「キャンプは全然ダメだった。そこがあってシーズンを良いものにできた」。わずか1カ月間でメジャーの試合に対応できるように、投打でレベルを上げた。それが二刀流での開幕ダッシュにつながった。

イブル氏は言う。「翔平には、2年目のジンクスはないだろうね」。殿堂入り選手以上の適応能力の高さと地道に努力する姿勢を考えれば、同氏の言うことも納得がいく。打者に専念する来季、今季以上の飛躍は想像に難くない。【斎藤庸裕】