【テンピ(米アリゾナ州)10日(日本時間11日)=斎藤庸裕】心配は無用! 右肘内側側副靱帯(じんたい)の再建手術(トミー・ジョン手術)から復活を目指すエンゼルス大谷翔平投手(24)が、通算354本塁打の元メジャーリーガー、ルイス・ゴンザレス氏(51=ダイヤモンドバックス球団シニアアドバイザー)から「今季は3割、25本以上打てる」と太鼓判を押された。同氏は現役生活の晩年にトミー・ジョン手術を経験。術後の打撃面の変化について語った。

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ダ軍のレジェンドが、打者大谷への不安を一掃した。通算354本塁打の中距離打者。同じ右投げ左打ちでもあり、同タイプの強打者が術後の打球の飛距離、パワー面での変化は「なかった」と証言した。タイミングを外された際の空振りや、全力でボールを引っ張る際も「全く問題ない」。04年は17本塁打で手術後の05年は24本塁打。打率、打点、打撃3部門で成績を上げた。

04年8月2日に手術を受け、約6カ月後の2月にはフリー打撃を再開。「イージーだったよ」と笑って振り返るが、苦労したのは「試合勘」だった。キャンプでは実戦形式の打撃練習に積極的に参加。37歳のベテランとしては異例だが「とにかく試合に慣れたかった。試合に出続けて、最終的には開幕メンバーに入れた」と、ほぼ全試合オープン戦に出場し、試合勘を取り戻した。「大谷にとってもそこが一番、難しいだろうね」と案じた。

それ以外ではさほど打撃面で苦労はなかったが、トミー・ジョン手術を乗り越えるには「強い精神力が不可欠」とも言った。手術直後はしばらく痛みが続き、ギプスで腕を固定するため、日常生活にも支障が出る。数カ月は地道なトレーニングに耐える精神力も求められる。ただ「彼はプライドを持っている選手に見える。俺が大谷だというものをまた、皆に見せたいと思っているだろう。そういう強さがあれば、大丈夫」と力説した。

術後5カ月と10日、フリー打撃はまだ再開していない大谷だが、自主的にブルペンで投手の球筋を確認するなど、実戦に向けた準備を行っている。「頭の良い選手。何をすべきか理解している」とゴンザレス氏。自身の経験談を踏まえた上で、大谷の今後を占った。「去年より良い成績を残すと思う。3割、25本は打てる。打点も去年(61打点)以上稼ぐだろう。トミー・ジョン手術が、打撃に影響を与えることはない」。打者大谷へ、先人から心強いメッセージが届いた。

◆大谷のリハビリ経過

10月1日 ロサンゼルス市内の病院でトミー・ジョン手術を受ける。

11月6日 エプラーGMが「大谷は体幹強化や下半身を鍛えるトレーニングを行っている」と明かす。

1月31日 右腕のウエートトレーニングが可能となる。

2月8日 素振り開始。

2月22日 ティースタンドに置いたボールを打つ(置きティー)練習を開始。

3月1日 ソフトトス(下から投げられたボールを打つ)練習を開始。

3月8日 キャッチボール再開。

▽ベドロジャン(11年5月に手術。14年にメジャーデビューし、通算215試合の登板で肘に支障なし)「今は成功率が高いし、焦らずに、リハビリの過程を信じてやっていけば大丈夫」

▽カーティス(12年に手術。復帰後、球速が微増)「素晴らしいのは、彼が打者でチームに貢献できること。落ち着いて、我慢して、チームとなるべく関わって、復帰した時に僕らを助けてくれたら、最高だね」

▽J・Cラミレス(昨年4月に手術。大谷と同様、リハビリ中)「彼はすごく良くやっているよ。(通訳の)一平もいるし、彼は本当に良いヤツだから。僕らチームメートもいる」

▽ヒーニー(16年7月に手術。昨年チームで唯一、先発ローテーションを守り9勝)「どうすべきだとかはこちらからは言わないけど、質問があったらいつでもウエルカム。元気そうに見えるし、良い感じだね」

▽スカッグス(14年に手術。昨年自己最多の8勝)「僕は復帰までほぼ2年かかったけど、彼は打てるし、ちょっと状況が違う。良い状態で、チームの一員として助けてほしいね」

▽コザート(11年の8月に手術。12年は遊撃で138試合に出場して15本塁打)「彼は走者をかえしてくれるし、復帰をせかしたくはないけど、早いに越したことはない。チームにとって非常に大きな存在だよ」

◆ルイス・ゴンザレス 1967年9月3日、米国生まれ。88年ドラフト4巡目でアストロズに入団。90年メジャーデビュー。99年、シーズン206安打で最多安打。01年ヤンキースとのワールドシリーズ第7戦でサヨナラ打を放ち、ダイヤモンドバックスを初の世界一に導いた。ニックネームは「ゴンゾ」。背番号「20」はダ軍の永久欠番。通算打率2割8分3厘、354本塁打、1439打点。188センチ、81キロ。右投げ左打ち。