米大リーグ機構(MLB)は23日(日本時間24日)、新型コロナウイルス感染拡大の影響で延期していた今シーズンについて、7月23日か24日に開幕することを発表した。レギュラーシーズンは60試合。

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難航した交渉の最大のネックは双方の不信感だった。3月下旬、機構と選手会の間では、コロナ禍による中止に際し、再開した場合の試合数削減、試合数に比例した年俸からの削減などで合意していた。ところが、無観客となることで大幅な収入減を強いられるオーナー側が、さらなる年俸減を提案したことで、事態は一気にこじれた。

21年12月に現行の労使協定が無効となることもあり、選手会にとって、一度合意したはずの年俸面で譲歩する選択はなかった。不測の事態とはいえ、経営側の意向に押し切られることは、労使闘争では敗北を意味する。その前例は、将来的に汚点になりかねない。“世界一強い労働組合”と言われる選手会は、来オフの折衝を見据え、徹底抗戦の構えに固執した。役員の某選手は米メディアに対し、「我々だけでなく、将来の選手のためにも闘う」と明言。機構側の最終案を否決し、コミッショナー裁定に委ねたのも、絶対に妥協しないとの意思表示だった。

一方で、6月10日の新人ドラフトの際、マンフレッド・コミッショナーが、開幕について「100%」と発言したにもかかわらず、数日後に「自信はない」と前言撤回したことで、選手間の不信感はピークに達した。これまで同氏は、試合時間短縮を目的としたルール変更やマイナー縮小などを提起したほか、「飛ぶボール」への変更疑惑が浮上するなど、ビジネス面での利潤追求ばかりがイメージされてきた。今年2月、アストロズのサイン盗みが発覚した際には、ワールドシリーズのトロフィーを「piece of metal(金属のかけら)」と表現。その後、謝罪したものの、球界トップとしての資質を問う声が相次いだ。

過去数カ月、球音を待ち続けたファンにとって、開幕決定は朗報に違いない。たとえ無観客でも、ライブの試合の迫力は何にも代え難い。ただ、今回の交渉で、選手会側は感染拡大に伴うシーズン中止を想定し、法的手段を含め異議申し立ての権利を確保した。ファンあってのプロ野球でありつつ、選手と家族の健康安全なしでも成立しない。開幕日が決定しても、不安材料は払拭(ふっしょく)されていない。【MLB担当=四竈衛】