今シーズン犠打ゼロのレイズが、短期決戦の勝敗を左右する場面でバントした。アストロズとのア・リーグ優勝決定シリーズ第3戦、逆転した6回無死一、二塁で6番マーゴーに犠打のサインが出た。初球スライダーをバットに当て、飛球になったが投手と捕手の間にポトリと落ち、かろうじて成功。小技を絡めてチャンスを広げ、この回の5得点につなげた。

今ポストシーズン(PS)合計38試合で初の犠打で、レイズでは60試合のレギュラーシーズンを通じても初。PSで3本塁打、前日の第2戦でも3ランを放ったマーゴーの打席で決断したキャッシュ監督は「サインだった。我々には、バントのサインもあるんだ」とおどけた。昨季も162試合で犠打数8は30球団で3番目に少ない。極めて珍しい作戦を、逆転した直後の押せ押せムードの中で仕掛けた。

めったにサインが出なくても、準備は怠らない。日本のようにマシンを相手にバント練習の場所を設けることはないが、メジャーではフリー打撃の1セット目で各自が必要に応じてバント練習を行うことが多い。レ軍も複数人が一塁側や三塁側へバントをしてから打撃練習を開始する。PS中も継続しており、大事な局面で繰り出した。

これまでの強打ではなく、この日は1点を取ることに徹した。守備でも外野手の連日の好プレーで流れを引き寄せ、堅実な野球で3連勝。キャッシュ監督は「選手は自信を持ってプレーできている。明日も、勝つための方法を見いだす」。12年ぶりのワールドシリーズ進出まで、あと1勝だ。(サンディエゴ=斎藤庸裕)

〇…MLBでは18年頃から犠打の減少傾向が顕著になっている。17年頃から始まったフライボール革命の影響もあり、打線のどこからでも本塁打が出るようになったことが一因だ。またデータ分析が重視されるようになり、近年は本塁打だけでなく四球、三振も激増。それらが他のスタッツ(統計数値)を食っているという面もある。今季はナ・リーグもDH制を採用したため、犠打などの細かい打撃がますます減少。全打席における犠打の比率は、昨季と比べ半分程度となった。