MLBで活躍する名セラピストで、日本人としては先駆的存在だった西尾嘉洋さんが米球界を引退し、帰国して名古屋市千種区に治療院を開業した。名付けて「七回裏治療院」。7回表裏の間は「セブンス・イニング・ストレッチ」と呼ばれ、観客が手足を伸ばし、体をほぐす時間。また、西尾さんが試合後の選手の治療準備をそろそろ始めようかという頃合いでもある。還暦を超えた西尾さんにとっては「人生はまだ七回裏あたり」という思いを込めたネーミングでもあるという。

メジャーで20年以上、メッツ、ブレーブス、アスレチックスなどで活躍。レッズの強打者ジョーイ・ボット内野手(37)をはじめ、多くの大物選手から頼りにされる存在だった。一番の思い出は「ロッキーズ時代の07年とメッツ時代の15年、2度のワールドシリーズを経験したこと」だという。残念ながら07年はレッドソックス、15年はロイヤルズに敗れ世界一リングを手にすることはかなわなかったが、リーグ優勝リングは得た。球団スタッフがもらうリングは選手のそれよりもグレードは落ちるそうだが、それでも庶民感覚からすれば目が飛び出るほどの税金を、リングを受け取ることで払うことになるというのも、経験して初めて知った。

MLBで長年仕事をしてきたため、記念グッズのコレクションは大変な数になった。サイン入りバットだけでも、本塁打王に4度輝いたマーク・マグワイア元内野手(57=アスレチックス)、00年MVPのジェーソン・ジアンビ元内野手(50=ヤンキース)、00年首位打者のトッド・ヘルトン元外野手(47=ロッキーズ)、12年新人王で15年MVPのブライス・ハーパー外野手(28=フィリーズ)と、往年の名選手から現役スター選手までズラリ。治療院にはこれらグッズが展示され、まるでプチ博物館だ。MLBファンの憩いの場になればと、西尾さんは願っている。