【アナハイム(米カリフォルニア州)7日(日本時間8日)=斎藤庸裕】ユニコーンが、ゴジラを超えた。エンゼルス大谷翔平投手(27)が、日本人最多のシーズン32号本塁打を放った。「2番DH」で出場したレッドソックス戦の5回、左腕ロドリゲスから右越えの決勝ソロ。04年に松井秀喜(ヤンキース)がマークした31本を抜き、日本人野手の最多記録を打ち立てた。本塁打キング独走で、シーズン60発ペースをキープ。球宴前に32本塁打と12盗塁以上は、史上初の快挙となった。

夢を乗せた大谷の打球が、右翼スタンドへ飛び込んだ。5回無死、左腕ロドリゲスの内角チェンジアップを捉えた。3戦ぶりの32号。04年に松井がマークした31本塁打を17年ぶりに塗り替えた。「子供の頃からずっと見ていたので、光栄だなと思います」。球団を通じて松井氏から「真の長距離打者」と称され、「素直にうれしいですし、わざわざコメントして頂けるのも、すごくうれしい。まだまだ打てるように、期待に応えられるように頑張りたい」と意欲を燃やした。

前日は投手で4勝目を挙げ、日米通算50勝を達成。翌日、豪快な1発をたたき込んだ。投打の二刀流でありながら、シーズン60発ペース。ベーブ・ルースでさえ、60本は打者に専念後の数字だ。まさに超人的。この日の本塁打後、エンゼルス戦の中継局の実況から「猛獣だ!」と叫ばれたが、手足がすらりと長い大谷は、神話上の生き物ユニコーンが似合う。「ゴジラ松井」を「ユニコーン大谷」が、シーズン86試合でさっそうと抜いてみせた。

もはや手負いの状態でも打てる。本塁打を放った打席、内角攻めで自打球を2球、右足首と左膝に当てた。「厳しいところに来ているので、差し込まれると自打球になる」。再び内角に食い込んできた7球目、痛みもなんの、下半身との連動でフルスイング。完璧に打ち返した。ゆっくりホームを踏み、歩いてベンチへ。だが試合後には「結果的に打っているので(影響は)なかったかなと。大丈夫だと思ってます」とケロリ。淡々と振り返った。

投打で活躍した前日に続き、この日は決勝弾でチームの2連勝に貢献。ア・リーグ東地区首位のレッドソックス3連戦で2勝1敗と勝ち越し、貯金を2とした。「素晴らしいチームなので、僅差のゲームをとれたのはチームとしても自信になるかなと思います」。13日のオールスター戦まで前半戦残り3試合。ユニコーンのごとく、駆け抜ける。

◆大谷はユニコーン 4月12日のロイヤルズ戦前、同僚のウォルシュが「彼はユニコーンだ」と、大谷を神話上の生き物に例えた。超人的なパフォーマンスをするアスリートについて、レアな存在として強調したい場合の表現として使われる。最近では7月2日にカナダのスポーツ専門局が「彼は野球界のユニコーン」との見出しで二刀流での活躍ぶりを取り上げた。