両軍2勝2敗と天下分け目の一戦となった第5戦の試合前、ドジャースは、今季20勝を挙げ、先発濃厚だった左腕ウリアスではなく、救援右腕クネバルが「オープナー」として先発することを発表した。客観的に見れば「奇策」のように映っても、相手を欺くためではなかった。

前夜、ド軍ロバーツ監督は、ジャイアンツのキャプラー監督に携帯メールで、自軍の先発予定を伝えた。左腕相手であれば、上位打線にズラリと右打者を並べるのが常とう手段。ただ、ロバーツ監督は、現役時代にレッドソックスの同僚で、かつてド軍の育成スタッフだった盟友に、包み隠すことなく、正攻法で勝負を挑んだ。試合前、ロバーツ監督は「オープナー」について「個人的なものではなく、組織としての決断」と、フロント首脳との合議だったことを明かした。奇をてらうのではなく、自軍の手の内を明かすことで、敵陣に通常以上の重圧をかける狙いがあった可能性も高い。結果的に、ジ軍は1番に起用した左打者ラステラを早々に交代させた末、ド軍の継投策の前に沈んだ。

大一番では、正々堂々と「奇策」で挑んだド軍が勝利した。公式戦とは異なる総力戦だけに、持ち駒を残して負ければ悔いが残る。先発の大黒柱シャーザーが試合を締めくくった一戦には、野球の醍醐味(だいごみ)が詰まっていた。【MLB担当 四竈衛】