レッドソックス沢村拓一投手(33)が、日刊スポーツ連載「ありのまま」の最終回をお届けする。メジャー移籍1年目は、名門レッドソックスの勝ちパターンの一角でフル回転。55試合に登板し、5勝1敗、10ホールド、防御率3・06と活躍した。憧れた舞台での1年を「ありのまま」に振り返った。【取材・構成=久保賢吾】

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-今季の成績への自己評価は

成績に関しては、自分のことを自分で評価しないんで。それは周りがすることですからね。僕の中では数字というよりは、一番評価できるのはケガをせずに、離脱しなかったことですね。コロナ以外で。そこだけです。

-55試合の登板は目標を超えたか

目標とかも立てなかったんです。とにかく健康でいること。そこに関してはお金も時間も使ったし、いろんな人に助けてもらった。ケガしなかったら、ある程度はやれるというのは思ってましたよ。力勝負しに行ってるわけですから。

-印象に残るこの試合、この対戦は

最初のヤンキース戦ですね(注1)。2イニング投げて、いいピッチングできたことが、ものすごく自信になりましたね。ジャッジ、スタントンとかと対戦して、世界で勝負していけるかなっていうきっかけだったり、自信を持ってもいいんじゃないかと思えた試合でしたね。

-メジャーのポストシーズンはどうだったか

あれだけシーズンで投げたのに、不安いっぱいで投げていて…。ポストシーズンの時は投げるのが、怖かったですね。のまれてましたから。あの雰囲気は言い表せられないです。歓声と音楽で球場がライブのような状態でしたからね。

-球場の雰囲気も違ったのか

チケットが高騰するのもあるのかもしれないですけど「ボールください」って言ってた子どもたちがいなくなって、大人だけになるんです。米国のファンの方は本当によく野球を見てるなって思いますね。ただやじってるわけじゃなくて、絶対にストライクだろってボールの時にブーイングが起こったり。

-ファンの存在は大きかったか

熱いですよね、チームに対して。街を挙げて、応援してる感じがひしひしと伝わってきます。一番印象に残っているのは、シーズンが終わってボストンの街を歩いてる時に「君の活躍のおかげで今年はいいシーズンを送れた」と。レストランで食事してた男性が外に出てきて、僕に言ったんですよ。本当にびっくりしましたけど、うれしかったですね。

-一番のギャップは何だったか

時差は慣れないですね。チャーター機だから楽でしょって言われますけど、試合終わって、そのまま移動して、1、2時間時差があるのはきつかったです。寝られなかったりするとマイナス思考というか、気持ちが弱くなったりする時があるんです。それでも、自分を鼓舞して、戦わなくちゃいけないんですけど。

-野球でのギャップは感じなかったか

パワーとかスピードも全然違うし、出てくるピッチャーがみんな155キロくらい出ますからね。昔からトレーニングが大事とずっと言ってきましたけど、トレーニングをやらないとそこは追いついていかないなと。ウエートトレーニングのこととか言われましたけど、自分は間違ってなかったなと思いましたね。

-新たな夢や目標は

33歳になって、同級生がやめていくのを見ると、いつか引退する時が来るんだろうなと思いますけど、それは今じゃないなと思います。想像はしてなかったですけど、キャリアの中でも一番、速い球(99マイル=約159キロ)を投げられていますし、もっとうまくなりたいという思いは持っています。

-今オフのテーマは

シーズン終盤にコロナになって、歯車が全部狂ってしまった。ちょっと悩んでたんですけど、最後のナショナルズ戦でつかんだものがあって。腕を振れって言うんですけど、僕の中では指を走らせる感覚をずっと探していて、それが今、すごい自分の中でフィットしています。

◆注1 6月4日(日本時間5日)ヤンキース戦で同戦初登板。1イニング目はサンチェス、ガードナー、ラメーヒューを3者連続三振に抑え、2イニング目もジャッジ、ウルシェラを連続三振に抑えるなど、2回を無安打無失点5奪三振と快投した。