【オークランド(米カリフォルニア州)5日(日本時間6日)=斎藤庸裕】史上初で開幕し、史上初で幕を閉じた。エンゼルス大谷翔平投手(28)が、シーズン最終戦のアスレチックス戦に「3番DH兼投手」で出場し、5回1安打1失点。9敗目を喫したが、今季は投手で15勝9敗、防御率2・33と昨年以上の結果を残した。打者でも打率2割7分3厘、34本塁打、95打点の活躍。2年連続、162試合のシーズンを二刀流で完走。近代メジャー史上初となる同一シーズンでの投打「ダブル規定到達」を達成し、メジャー5年目を締めた。

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最後まで、やり切った。二刀流・大谷のシーズンが終わった。試合後の会見場には、笑顔でやってきた。どこか、いつも以上に柔らかい表情。今季、印象に残っている試合について一瞬、沈黙した。「すぐにはないですかね。ほとんど前のことは忘れてしまいました。フッフ」と、また笑った。目標を掲げながら、1試合1試合。6カ月の戦いを、一心不乱に駆け抜けたからこその言葉だった。

最終戦に登板し、投打「ダブル規定」の快挙を達成した。「2つやっている段階で(規定に)乗るか、自分として目指すべき数字なのかどうか。やってみないと分からないので、それが分かったのが良かった」。この日、1イニングを投げ、1900年以降ではメジャーでも前人未到の域に達した。すると、中指の皮がむけた。9月に入り、ケアしていた中指のマメ。5回で限界を迎えた。「安定して出られれば(規定到達は)どちらもいける範囲内と認識しましたけど、自分の体調を無理して崩していくところではない」。たどり着いたからこそ、分かった感覚だった。

歴史を刻んだ昨年に続き、今季も史上初の「開幕投手で1番打者」から始まった。「(相手に)やられることに対して、それ以上のことをしていかないと向上はしていかない。守りに入ってたらやっぱり、無難なところにしかならない」。春キャンプではチェンジアップを磨いた。シーズン中にはスライダーの変化量と球速にバリエーションを加え、終盤以降はツーシームが強力な武器となった。飛躍を遂げた投手・大谷。「いろいろ試しながら投げましたけど、来年以降も工夫しながらできれば、もっといい数字が残る」と、確固たる自信を得た。

荒波にもまれ、二刀流は成長する。今季はマドン監督が6月に解任され、チームは球団ワーストの14連敗。大失速でプレーオフ進出の望みは早々についえた。「目指すところが見えなくなるというか、9月はそういう面ではなかなか難しいと思いますけど、それでもやれることをやるのが一番大事」と士気を保った。最終的に本塁打は出なかったものの、ラストスパートで自己新記録の18試合連続安打をマーク。チームと自身の失速が重なった昨年とは大きな違いだった。

2年連続、投打でフル稼働し、シーズンを完走した。「来年も継続して成長できれば、もっともっといい選手になれる」。さらなる高みを見据えながら、1つ、心残りがあった。「今日で終わってしまうのは不本意なところではある。一番は、勝ちたいかなと。ここからが本番だという気持ちでプレーできるように、頑張りたい」。10月の戦い。そこで勝つことを夢描き、二刀流の挑戦は続く。

【今季成績まとめ】大谷翔平「ダブル規定到達」防御率や勝利数、本塁打でリーグ4位 奪三振率1位