プロ野球の快記録や珍記録を振り返る連載「データで見る22年」。第13回はメジャーで活躍する日本人選手を取り上げます。

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今季の日本人大リーガーでは、大谷翔平投手(28=エンゼルス)が現行ルールで史上初の投打同時規定到達、ベーブ・ルース以来104年ぶりの「2桁勝利&2桁本塁打」を達成した。いずれの快挙も投手力の飛躍があってこそだが、8月から新球種ツーシームを使い始め、一段と打たれなくなった。そこでツーシームの使用前、使用後に分けて成績を比較してみた。

ツーシームを本格的に使い始めたのは8月15日マリナーズ戦から。使用前、使用後では防御率が2・68→1・64と1点以上良化した。被打率も2割1分4厘から1割8分に。疲労が蓄積する終盤に数字を上げた。大谷のツーシームは最速101・1マイル(約162・7キロ)。9月3日アストロズ戦では横幅で最大53センチも変化し、自ら「えぐい」と手応えを感じ取った。超高速の直球軌道から打者の手元で靴2個分ほどの53センチも横滑りしたら、バットの芯に当てるのは至難。ボールゾーンからストライクゾーンに食い込めば、手を出せない。

ツーシーム単体でも被打率1割6分7厘と通用したが、打者に新球を意識させれば他の球種も生きる。球種別では全体39・1%と最も多く投げたスライダーの被打率が1割5分9厘。スライダーは6、7月に日本投手初の6試合連続2ケタ奪三振をマークするなど軸として十分使えるのに、満足しないのは常に進化を求める大谷らしい。シュート成分のあるツーシームを加え、逆に曲がるスライダーとは相乗効果になる。

球が動けば早いカウントで打ち取れ、少ない球数で長いイニングを投げる効果も見られた。ツーシーム使用後、平均投球回は5・84回から6・11回にアップ。胃腸炎のため4回降板(8月21日タイガース戦)、右手中指マメのため5回降板(9月10日アストロズ戦)があったにもかかわらず、平均投球回は上がった。9月には大リーグ自己最長タイの8回を2度マークし、大リーグで初の規定投球回到達につなげた。防御率2・33は100イニング以上投げた日本投手で95年野茂(ドジャース=2・54)を上回る史上最高。来季は防御率1点台、ノーヒットノーランをマークしても不思議ではない。【織田健途】(おわり)

◆ツーシーム 「シーム」はボールの縫い目。人さし指と中指を縫い目に沿って握る。最速100マイル(約161キロ)前後のボールが大きく減速せず、打者の手元で左右に変化したり、沈む。大リーグでは「シンカー」と表現される。

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<メジャー日本人の2022年 投手>

◆ダルビッシュ有

8月で36歳となったが、衰えていない。3度目の開幕投手を務め、シーズン16勝は渡米1年目の12年に並ぶ大リーグ自己最多タイ。1イニングあたりの許走者を示す「WHIP」は0・95と大リーグ移籍後の自己ベストで、両リーグを通じ4位。ナ・リーグのサイ・ヤング賞アルカンタラ(マーリンズ=0・98)を上回った。クオリティースタート(QS=先発6回以上、自責点3以下)25度は、02年野茂に並ぶ日本人最多タイ。QS率83・3%は20年に自ら記録した日本投手最高に並んだ。大リーグ実働10年目に到達。日本投手の実働10年以上は野茂(12年)大家(10年)に次いで3人目だ。日米通算188勝(日本93勝、米国95勝)。楽天田中将大(日米190勝)とともに200勝の大台到達が射程内となった。

◆有原航平

昨年9月に戦力外となり、招待選手としてメジャーキャンプに参加。オープン戦で2試合連続5失点とアピールできず、開幕をマイナーで迎えた。8月にメジャー復帰し、1年4カ月ぶりに勝利を挙げるも9月10日ブルージェイズ戦で4回途中11失点。日本投手で3度目となる1試合2桁失点を喫し、事実上の戦力外となった。

◆菊池雄星

3月にブルージェイズと3年総額3600万ドル(当時のレートで1ドル115円=約41億4000万円)で契約。価値の高い速球派左腕として新天地でのスタートを切ったが、先発20試合でクオリティースタートは3度。8月18日以降はメジャー通算4年目で初めて、先発ローテーションから外れ、救援に配置転換となった。

◆沢村拓一

8月28日にメジャー40人枠から外れ、出来高払いが発生する50登板にあと1試合足りなかった。9月11日に自由契約。1年目に比べ防御率3・06→3・73、ホールド10→3と成績を下げた。

<メジャー日本人の2022年 野手>

◆鈴木誠也

ポスティングシステムを利用して渡米。デビュー4試合で3本塁打、8打点をマークし、07年岩村に並ぶ日本選手最長のデビュー9戦連続安打。4月は日本選手で大谷以来4年ぶりとなる月間最優秀新人に選ばれた。5月26日、二盗の際に左手薬指を負傷して離脱したが、復帰した7月4日から2試合連続本塁打。9月は53打数17安打(打率3割2分1厘)と開幕当初の勢いが戻った。来季は日本選手で松井秀、大谷しか記録していない20本塁打をクリアしたい。

◆筒香嘉智

メジャー3年目。日本選手では10年松井秀(エンゼルス)以来12年ぶり2人目の開幕戦4番スタメンを果たすも、腰痛などで低迷。8月にパイレーツを戦力外となり、ブルージェイズとマイナー契約。3Aでは2球団合計38試合で7本塁打だった。

◆秋山翔吾

開幕直前にレッズを自由契約に。パドレスのマイナーを経て6月に広島入団。大リーグ2シーズンの通算打率2割2分4厘、本塁打なしと苦戦。

◆加藤豪将

米国の高校出身。マイナー生活10年目の今季、日本のプロ未経験では鈴木誠、多田野数人、田沢純一に次ぐ4人目、野手では初の大リーグデビューを果たした。出場8試合に終わるも4試合はスタメン起用され、待望の初安打を記録。日本ハムからドラフト3位で指名された。