ガーディアンズからFAとなっているルーカス・ジオリト投手(29)は、大谷翔平投手(29)にことごとく、やられた。ここまで通算の対戦成績では26打数8安打(打率3割8厘)、3本塁打、4打点、二塁打1本、三塁打2本と打ち込まれている。

7月末、ホワイトソックスからエンゼルスにトレード移籍。約1カ月間、大谷と同僚になった。「遠くから見ていて、長い間、尊敬していた」とリスペクトを示した上で、なぜ打たれていたのか、打ち取るのが難しいのか、原因を分析し、その一端を明かした。

「彼は、失投を芯で捉え、ほとんどミスショットしない。ストライクゾーンの隅に投げ、いろんな球種を交えていかないといけない。アナハイムで投げた時(6月28日)、彼は低めのチェンジアップをすくって、三塁打にした。かなり、いいチェンジアップだった。その後、僕は三振を2度、奪うことができた。普段、使わないような配球でね。彼が学習するのは分かっていた。相手投手がどのように攻めてくるか、どう打ち取ってくるか、彼は準備している。だから、左打者にはほとんど投げないスライダーを使ったり、直球をいろんなところに散らしたりしたんだ」

今年6月28日の対戦をたどってみると、1打席目、フォーシームで追い込まれた後、大谷は5球目の外角チェンジアップに反応し、体勢を崩されながらも右翼線へ運んだ。5球のうち、スライダーは1球もなかった。2打席目は空振り三振。6球のうち、スライダーを2球使った。3打席目は見逃し三振。7球のうち、2球スライダーを見せ、最後は外角高めフォーシームで裏をかいた。

対左打者のジオリトの配球傾向は、スライダーの割合が低く、今季はフォーシーム、チェンジアップ、カーブを含めた全4球種で約17%。例年10~15%程度だ。対左打者には約80%がフォーシームとチェンジアップのコンビネーションで、当然、データは大谷の頭にもインプットされていたはずだ。投手でもある大谷は、相手の攻めをイメージしやすいとの見方もあり、パターン化された打ち取り方は通用しない。ジオリトの経験に基づくと、基本的には使わない、通常とは異なる配球が打席ごとに必要だという。

ジオリトが、大谷とともにシーズンを戦った期間はわずか1カ月。それでも二刀流への尊敬のまなざしは、ひときわ目立っていた。「ピッチングとバッティングの両方で、ものすごいエリートレベル。彼が出来ることというのは、アンビリーバブルだ」。対戦相手として、元同僚として、身をもって実感しているに違いない。【斎藤庸裕】

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