エンゼルスからFAとなっている大谷翔平投手(29)について、対戦した敵軍の監督が白旗を上げるコメントを残すことは珍しくない。時にはユニークな表現で、類い希な二刀流の能力を評されることもある。

今季限りでアストロズの監督を退任したダスティー・ベーカー氏(74)は、夫人が大谷のファンでも知られる。歴代7位の通算2183勝の名将はかつて、「大谷はオールスター級の選手ではなく、メガスターだ。トップクラスの攻撃的選手で、トップクラスの投手の1人」と絶賛した。

アストロズと同じく、ライバル球団のレンジャーズは今季、ワールドシリーズを制覇。今季から歴代10位の通算2093勝でチームをまとめたブルース・ボウチー監督(68)は大谷のプレーを見て、「世界で最も素晴らしい選手。投げて、打って、盗塁もして、全てのことをやる。ものすごい選手。それ以外に、表現しようがない。彼以上の選手が誰なのか、分からない」と話し、適切な表現に困るほどだった。

同地区のア・リーグ西地区だけでなく、東地区の敵将たちも二刀流のパフォーマンスを称賛する。レッドソックスのアレックス・コーラ監督(48)は「彼がやっていること、やってきたことは驚くべきこと。最高のアスリート。打者も投手も(試合へ向けて)準備しなくてはいけない。それを彼は全てやっている。ブルペンでの練習や、映像を見たり、相手の資料を確認したり、どんなスケジュールでやっているのか分からない。素晴らしい」と、試合前の準備やタイムマネジメントの難しさを指摘しながら、リスペクトを示した。

今年7月28日、ブルージェイズのジョン・シュナイダー監督(43)は驚きで言葉を失うような様子だった。前日の7月27日、大谷はタイガースとのダブルヘッダー第1試合で完封勝利を挙げ、第2試合で2打席連続本塁打をマーク。同監督は映像を確認した上で、「完封して、打者で2発。なんというか、『へい、君は一体なにをやってるんだ』って感じかな。ただただ、信じられない。身体的にどう感じているのか、想像できない。驚くべきことだ」と舌を巻いた。

タイガースのA・J・ヒンチ監督(49)は、アストロズを指揮していた時期(15年~19年)も含め、二刀流の大谷をよく研究してきた敵将でもある。だからこそ、大谷への警戒度は常に高かった。「全てにおいて最高レベルでエリート級。彼に対して脱帽しなくてはいけないし、世代を代表する選手と対戦していることを理解する必要がある」と称賛。さらに「対戦チームが彼に対してどう投げてくるか、対応して、よりいい打者になっている。本塁打を打つときは強くスイングするし、時にはパワーよりもヒットを優先する時がある。彼はスーパー・デンジャラスだ」と評した。

今季、大谷はシーズン終盤で欠場することとなったが、投打の結果を踏まえれば、自身2度目のシーズンMVP獲得が濃厚だ。対戦した敵将たちの言葉が、最高評価であることを物語っている。【斎藤庸裕】