大谷はプロスポーツ史上最高額、山本はメジャーの投手史上最高額でドジャースと契約を結んだ。なぜ、日本人選手がこれほど破格の評価を受けるのか。95年の野茂英雄以来、「日本人ブランド」が上がってきた過程を探る3回連載の最終回。

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野茂英雄が太平洋を渡った95年、当時の日本人選手にとって、メジャーはあくまでも「夢」だった。それが今や、花巻東時代の大谷翔平が「目標設定シート」に書き込んだように、各選手の確かな「目標」へと変わった。数多くの日本人メジャーが日本球界に復帰するケースも増え、米国のレベルやトレーニング法などを伝え、身近に感じられる時代となった。メジャー経験者が監督など指導者として還元していることも、日本球界がレベルアップしてきた一因に違いない。

今年3月のWBCでは、「日本ブランド」の高さをあらためて実証した。準決勝のメキシコ戦、ベッツ、トラウトら最強布陣で臨んだ米国との決勝。ダルビッシュ、大谷のメジャー組だけでなく、快速球を投げ込む若い投手陣、吉田正尚らコンタクト能力の高い攻撃陣が総力を結集して頂点に立った。依然として、個々の体力やスピードで劣る点は少なくない。だが、かつて日本のレベルを「3Aか2Aクラス」と評していたような声は、米球界関係者の中でほとんど聞かれなくなった。元巨人マイコラス(カージナルス)、元阪神スアレス(パドレス)らメジャーで結果を残せず、日本球界での「再生」後、米国へ復帰した選手が活躍している側面も見逃せない。

各球団のスカウト陣は、今オフのFA市場にいる山本や今永らだけをチェックしてきたわけではない。ポスティングの所属球団からの承認時期が未定でも、佐々木朗希、村上宗隆ら侍ジャパンの主軸メンバーは近い将来の目玉として徹底調査を継続。さらに今後は、オリックス山下舜平大、阪神村上頌樹ら若いエース級の登板日には、ネット裏にスカウト陣が並ぶことも間違いない。日本の各球場にも最新データを得られるトラッキングシステムが設置されたことで、米国でも正確なデータや数値を把握。各選手の評価が細分化され、より正確になったことも日本市場人気の一因となった。

大谷、山本の巨額契約は特例に違いない。その一方で、今後も大谷が「二刀流」で輝き続け、山本が快投を演じれば、日本市場への関心度はさらに増す。野茂英雄が切り開き、イチロー、松井秀喜らのレジェンドが積み上げてきた「日本人ブランド」。その信頼感は、もはや簡単には揺らぎそうにない。【四竈衛】(おわり)

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