【ソウル(韓国)15日=斎藤直樹】メジャーリーグの開幕戦(20、21日)が行われる韓国に、パドレス、ドジャースがともに入国した。開場となる高尺スカイドームは、ド軍大谷翔平投手(29)らの巨大バナー広告や旗を球場周辺に掲示。入場チケット確認場所として、近隣のグラウンドの全面を使うなど準備を進めている。韓国で大谷の人気がいかに高いかを体感した記者が、現地ルポする。

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仁川国際空港から地下鉄を3度乗り継いだ、1号線の九一(クイル)駅前に、15年に開業した高尺スカイドームが鎮座する。シルバーの外観は京セラドーム大阪のようだが、客席は1万6000席あまりとサイズは一回り小さい。歩けば約10分で1周できる。駅から正面に見ると、大谷、パドレスのダルビッシュ、金河成らが描かれた巨大広告が目に入る。中ではパドレスの選手たちが、時差ボケ解消で汗を流していた。球場の周囲には、両球団の選手ののぼり旗が、横を流れる川にかかる橋まではためいている。

球場手前の運動用グラウンドは、白いテントが並んでいる。全面を使って、チケットの本人確認を行うようだ。1月に韓国国内で開幕戦の入場券が販売された際は、わずか8分で売り切れた。正規の価格より10倍以上で転売されたケースもあるというが、不当な転売防止のために本人確認を徹底する構えだ。

爆発的な大谷人気が起因している。空港に大谷のユニホームを着て駆けつけた会社員のギホさん(30)は「(韓国出身の)金河成より人気がある。投手と打者の二刀流はいない。ユニコーンだから」と言う。ソウル日本人学校の清水祐輔教諭(38)は「日本での孫興民(トットナム)の知名度よりははるかに上。野球を知らない人も知っている。野球を知っている人では金河成と肩を並べるかな」とした。

大谷の入団以前から、韓国ではドジャースの人気が最も高い。朴賛浩、柳賢振と韓国出身投手が活躍してきたからだ。2度のMVPをへて、韓国代表とも戦ったWBCで認知度がさらに上昇。相乗効果があった上に、今オフはサッカーのメッシを超えるスポーツ界最高額でド軍と契約した。爆発的な知名度浸透につながった。仁川国際空港につながる地下鉄内の動画広告は「独島(日本名・竹島)は韓国の領土」という主張の合間に「ニューバランスが大谷限定ワッペンを販売」というニュースが流れている。

大谷のユニホームとパドレスの帽子を抱えた大学生の孫在訓さん(24)の姿勢が、代表的な韓国民の立ち位置かもしれない。「大谷さんのファンは本当に多い。投手と打者でメジャーのトップというのは、国籍にかかわらず魅力的です。顔も格好いいし。自分は金河成と同じくらい応援してます」。大谷は間違いなく、韓国で愛されている。

◆高尺(コチョク)スカイドーム 15年に開場した韓国初のドーム球場。韓国プロ野球キウムの本拠地。人工芝。観客席は1万6744席。中堅122メートル、両翼99メートル。フェンスは4メートル。今大会から照明がLEDに変更された。所在地はソウル市九老区京仁路430。最寄り駅は九一だが、ターミナル駅の九老からも徒歩圏内。