【クーパーズタウン(米ニューヨーク州)24日(日本時間25日)=水次祥子】懐かしのピンストライプで大アーチを描いた。元ヤンキースの松井秀喜氏(39)が、野球殿堂記念のオールスター戦で、現役時代をほうふつさせる特大弾を放った。ア・リーグOBの「5番左翼」で先発出場し4回2死から、右翼スタンドの最深部に届く先制ソロ。観客席からは大喝采が起こり、元スターぞろいの華やかな舞台で存在感を発揮した。

 2年のブランクがあっても、ゴジラのパワーは色あせていなかった。ア、ナ両リーグの名OBが殿堂に集まり、記念試合で真剣勝負。松井氏は両チーム無得点で迎えた4回、元ブレーブスの左腕エイブリーにカウント1-2と追い込まれてから、4球目を完璧に捉えた。「狙うっていうことはないですけど、せっかくなので、ちょっと強めに振りました。やっぱりね」と上機嫌に振り返った一振りで、約95メートルの右翼フェンスを軽々と越え、客席後方まで打球を運んだ。

 殿堂の横にたたずむ、聖地ダブルデーフィールド。その瞬間、観衆6063人から口笛とともに「ゴジラ」「マツーイ」の大歓声が起こった。試合前セレモニーの選手紹介から、松井氏への声援はひときわ大きかった。中心街で行われたパレードでも、乗ったバスが通過すると「マツイ」の大合唱。すでに殿堂入りした6人を含む出場30人の元名選手の中でも、松井氏の人気は絶大だった。

 試合前は「(本塁打を)狙えるほど自信はないです」と話し、「辞退しました。そんな恥ずかしいことしないよ。ゼロで終わるから」と言いながら、無理やり参加させられた本塁打競争でも6スイングで2本の柵越え。他の強打者OBらと互角に渡り合った。現役さながらのスイングを披露し、現役復帰が頭をよぎったのでは、と聞かれると「面白いこと言いますね。(3打席とも)ホームランなら考えたかもしれない。代理人いないよ、オレ」と松井節のジョークも飛び出した。

 ヤンキース代表として、ピンストライプの背番号「55」で出場。試合は降雨により4-4の6回表終了で打ち切られ、松井氏は3打数1安打1打点だった。存在感は健在で、今後もOBとして声が掛かる機会が増えそうだが、「この後、またドロン(雲隠れ)ですけど。また5年後くらいに会いましょう」と笑い、さっそうと去っていった。