<ワールドシリーズ:フィリーズ8-6ヤンキース>◇第5戦◇2日(日本時間3日)◇シチズンズバンクパーク

 フィリーズのチェース・アットリー内野手(30)が逆転3ランを含む2本塁打。計5本塁打はレジー・ジャクソンのWシリーズ記録に並んだ。ヤ軍が3勝2敗で迎える第6戦は4日(同5日)にニューヨークで行われる。

 伝説の「ミスター・オクトーバー」、レジー・ジャクソンに並んでも、試合後のアットリーは少しほほえむだけだった。「確かにすごいこと。でも、いつか特別な思い出として振り返るもの。今はあと2試合に勝つことが、我々のゴールなんだ」。第1戦の2本、第4戦の1本、そしてこの日の2本で計5本塁打。だが、きまじめなバットマンはシリーズタイ記録には目もくれなかった。

 打撃の技術論には定評のあるマニエル監督も認める天才肌が、ひと振りで劣勢ムードを振り払った。1点を先行された直後の1回裏無死一、二塁。狙いを定めて右翼席へ運んだ。「初球の速球だったよ」。今季、公式戦571打数で初球を打ったのはわずか4・7%の27回。いわゆる「待球型」で、2ストライク後に強いことで知られる巧打者が、ヤ軍バッテリーの思惑をあざ笑うかのように、初球を完ぺきに仕留めた。

 さらに、7回裏にはカウント2-3から右中間へソロ本塁打。今季最後の本拠地試合を、2発4打点の活躍で締めくくった。それでも、ヒーローとしての実感は皆無だった。「投攻守のどれもが必要だが、とにかく試合に勝つことが重要なんだ」。歴史に名前を残しても、アットリーは連覇だけに目を向けていた。