待望の1発が試合を決めた。広島の野間峻祥外野手(22)が、中日戦の8回1死から右翼へプロ初本塁打を放った。開幕から54打席目。オープン戦に続く、公式戦12球団新人最速1号が、試合を決定づけた。緒方監督や先輩選手からの助言を受けながら成長するルーキーが、チームを3カードぶりの勝ち越しに導いた。

 雨を切り裂いた弾道は、コイ党で真っ赤に染まる右翼席に吸い込まれた。白球の行方を確認した野間は、二塁ベースを回ったところで両手をたたき、三塁を回って再び両手をたたいて喜んだ。ベンチでは緒方監督から頭をたたかれ、チームメートからも手荒い祝福を受けた。「本塁打よりも3点目が入ってうれしかった」。勝利を決定づける1発。一打逆転の場面で最後の打者となった前夜の借りを、オープン戦に続く、公式戦12球団新人最速1号で返した。

 6回に代走から出場し、8回に打席が回ってきた。中日は投手を右の金子から左の浜田智にスイッチ。「左投手はあまり気にならない」。特に浜田智とは、中部学院大時代に明治神宮大会で対戦し、3打数3安打。プロ入り後も3月24日の2軍戦で中前適時打を放った。「スライダー主体のイメージ。追い込まれるまでスライダー待ちでした」。捉えた球は狙い球とは違う、真っすぐ。それでも「体が反応した」と振り抜いたバットからメモリアルアーチを描いた。

 オープン戦で結果が出ずに、悪循環から硬さが見られた。それでも開幕1軍に抜てきした緒方監督からは常々「思い切ってやれ」と言われてきた。また、同じ岐阜学生リーグ出身の菊池からは食事に誘われるなど助言を受けた。「菊池さんはいつもひょうひょうとしている。見習うことは多い」。本拠地マツダスタジアムで打席入りごとに流れる登場曲「恋のマイアヒ」は菊池の選曲。7日巨人戦から菊池が勝手に変えた。「菊池さんの仕業です」と野間は苦笑いするが「♪ノマノマイエー!」の音楽に乗って打席に入った成績は12打数4安打、打率3割3分3厘だ。

 「野球の技術やレベルではベテラン選手には追いつけない。チームを勢いづけるためにも、元気や思い切りの良さで引っ張っていきたい」。期待の新人が持ち味を発揮し始めた。【前原淳】