虎が首位巨人と勝率5割で並んだ。9回に守護神呉昇桓投手(32)がリードを守れず「奪首」はお預けとなったが、最後はベンチに野手1人しか残らない総力戦でドローに持ち込んだ。中断含めて6時間近い死闘での引き分け。虎が勝てず、巨人が負けたことで、60試合以上消化時でリーグに貯金チームなしという史上初の珍事が発生。今日24日はスッキリ勝って、首位取りといくで~。

 目前にしていた首位の座は不意に消えた。雨上がりの長野オリンピックスタジアム。1点リードの9回、守護神の呉昇桓が独り相撲を演じてしまった。先頭会沢に粘られた末に四球を与え、送りバントの構えだった代打野間には死球。無死一、二塁。丸に浮いた直球をとらえられ、右翼線に同点適時二塁打を浴びた。

 だが、借金転落のピンチで踏みとどまった。直後、1死満塁のピンチをしのぎ、延長戦も後を投げる投手が踏ん張った。延長突入時点で、ブルペンに残ったのは歳内と島本だけ。だが、その2投手も踏ん張り、中断時間含め5時間47分の今季チーム最長ゲームは壮絶な引き分け。バスに引き揚げるクローザーが「先頭に四球を出したのがいけなかった。最初からいかないと。点を取られてからじゃ遅い」と険しい表情を浮かべるのも当然。この日、首位の巨人は早々と敗戦。勝っていれば、単独首位に躍り出ていたが、惜しくもかなわず。それでも、勝利数の差でトップに立てなかったが、勝率は5割で並んだ。まさに一進一退の攻防。和田豊監督(52)も総力戦をこう振り返った。

 「今日はつかまったけど全力を尽くした結果。展開的に、いいところでひっくり返して勝ちたい試合。ベンチ全員、死力を尽くしてやった。全員の気持ちが1つになって、何とか取りたい気持ちが表れていた」

 8回に4番ゴメスの逆転3ランで勝ち越したが、終盤は緒方カープに押されっぱなしだった。その裏に福原が被弾し、呉昇桓もつかまった。それでも若い歳内と島本が耐えて、負けなかった事実は消えない。

 この日は序盤から大波乱の展開だった。2回裏の直前に大粒の雨が降り、34分間の中断。先発岩田が毎回のように走者を背負い、苦しい展開だった。ここまで今季2戦2敗の黒田相手に左打者が奮闘し、5回には何とか同点に追いついていた。苦しみながらもシーソーゲームに持ち込んだ。

 セ・リーグは全球団が貯金なし。60試合以上消化時点では史上初の事態。そして、まれにみる混セ。和田監督は言う。「気持ちが表れた試合だった。明日につながると思う」。この日、ベンチ入りメンバーで残ったのは梅野だけ。総力で戦ったドローゲームだった。今日24日は富山で緒方広島と戦う。虎は勝てば、巨人が勝っても、首位となる。さあ、いよいよ奪首だ。【酒井俊作】

 ▼セ・リーグは首位巨人が敗れて35勝35敗。リーグの全チームから貯金が消えた。これは60試合以上消化後では史上初。交流戦でセ・リーグが44勝61敗3分けとパ・リーグに大きく負け越したことが、この珍しい出来事を引き起こした。

 ▼セ・リーグの順位決定方法 巨人が35勝35敗、阪神が33勝33敗1分けで、勝率はともに5割。セ・リーグはアグリーメント(申し合わせ)で優勝球団決定方法について、勝率1位の球団が2球団以上となった場合、最も勝利数の多い球団、としている。シーズン途中の扱いはアグリーメントに明記されていないが、順位決定には同じ方法を適用する。そのため同率だが巨人が1位、阪神は2位となる。