何が飛び出すか分からない、これぞ超変革野球-。阪神金本知憲監督(47)が中日との開幕戦でいきなりイズムを全開披露した。1点を追う5回、8番岡崎がエンドラン、西岡の本塁突入、投手メッセンジャーが盗塁まで決めた。最後まで犠打もなし。悔しい逆転負けにも期待感が膨らんだ。型にはまらない金本監督采配が、楽しみになった。

 金本阪神の開幕戦は惜しくも悔しい逆転負けになった。中日の凱歌(がいか)が漏れ聞こえる一塁ベンチ裏。だが金本監督は敗者とは思えないほどすがすがしく、満足した表情だった。

 金本監督 今日はみんな本当に目いっぱいやってくれた。常に全力プレーでね。負けたけど本当にいいものを見せてくれたと思う。

 前日の宣言通り、バントなしの攻めの野球で押しまくった。象徴は1点を追う5回だ。先頭の7番西岡が中前打すると、岡崎もエンドラン成功の左前打。続くメッセンジャーの三ゴロの間に「ナイス判断!」と監督もうなった好走塁で、三塁走者西岡が本塁を陥れ、下位3人で同点だ。だが「超変革」の本領は、2死一塁となった打者横田の場面で敢行された。

 なんと一塁走者メッセンジャーがスタートを切った。虚をつかれた中日守備陣は二塁カバー不在。巨体を揺らして一気に三塁も奪った。

 金本監督 メッセの開幕にかける姿勢、意気込みが感じ取れたし盗塁なんてまさにその通り。三塁まで行ったろうという精神がね。

 メッセンジャー (大野の投球)パターンを盗めると思った。ノーサインさ。

 就任以来投手にも命じてきた走塁革命を開幕投手自ら体現した。阪神投手の盗塁は81年小林繁以来35年ぶり。外国人では81年の球団史で初の快挙だ。結果的に得点ならず、続く6回に激走の影響もあってか決勝点を奪われた。だが前のめりこそ金本野球の真骨頂だ。

 金本監督 攻め続けると逆手に取られたり、何でもイケイケでいいもんでもない。でも外されても、読まれてもいい。怖がらず、失敗してもいい。僕が恐れたら選手も恐れ始めるから。

 試合前のベンチ裏出陣式。熱い言葉で呼びかけた。「最強のチームになっていこう」。自らスタメンを読み上げ、全員を力強いハイタッチで送り出した。常勝軍団作りへ、貫く信念を再確認した空間でもあった。

 金本監督 (開幕戦の)緊張は正直あったね。消極的になる自分も怖かった。でも矢野の助けもあって、アグレッシブにいけた。横田も全力だったね。

 4回、遊ゴロでヘッドスライディングした横田の戦闘服は泥まみれ。そんな姿がたまらなくうれしい。手応えの1敗から金本丸が船出した。【松井清員】

<近年の阪神新監督の開幕戦>

 ◆星野仙一(02年3月30日、3-1巨人=東京ドーム)初の開幕投手を務めた井川が6安打完投勝利を挙げた。チームの開幕戦連敗は11でストップ。

 ◆岡田彰布(04年4月2日、8-3巨人=東京ドーム)1点を追う8回に、今岡の適時打などで、一挙6点を挙げた。チーム15年ぶりの開幕戦逆転勝利となった。

 ◆真弓明信(09年4月3日、5-2ヤクルト=京セラドーム大阪)41歳の誕生日を迎えた金本が3回に1号。藤川がリードを守り切った。

 ◆和田豊(12年3月30日、5-5DeNA=京セラドーム大阪)7回関本が代打逆転3ラン。9回追いつかれ、10回に勝ち越されたが、その裏柴田の犠飛で追いついた。